社労士が答える職場のQ&A

【国民年金と厚生年金について教えてください】《令和元年7月号掲載》

Q:今春、機械メーカーに就職し人事部に配属されました。先輩に実務を教わりながら、人事制度や社会保険について学ぶ毎日です。学生時代は国民年金の保険料を払っており、今は会社で厚生年金に加入しています。年金に加入できる年齢や、いつまで保険料を払えばいいのかなど基本的なことを教えてください。


A:国民年金への加入は20歳から60歳に達するまでで、加入期間は最高40年です。厚生年金保険は加入年齢の下限はなく、入社した日が厚生年金の資格取得日となります。加入上限年齢は原則70歳で、70歳の誕生日の前日に資格喪失となります。なお上限年齢を超えても受給資格期間を満たしていないなど、一定の条件を満たす場合には任意加入が可能です。受給に必要な期間は平成29年8月から改正されて10年間に短縮されました。現在は段階的に支給開始年齢が引き上げられているところで、昭和36年4月2日以降生まれの男性、昭和41年4月2日以降生まれの女性は原則として65歳からの支給となります。支給開始時期は希望に応じて繰り上げ・繰り下げが可能です。今後、加入上限年齢や支給開始年齢の引き上げの動きも予想されますので逐次、情報を入手しましょう。

【「分断勤務」について教えてください】《令和元年6月掲載》

Q:通信関連の会社で人事を担当しています。技術部門では深夜に突発的な作業や海外の取引先とのやり取りが発生し、勤務時間の管理に苦労してきました。さらに最近、社員に出産や介護の話も出てきて柔軟な働き方を提供したいと考えています。「分断勤務」という方法があると聞きました。概要を教えてください。

A:分断勤務は分割勤務とも呼ばれ、1日の所定労働時間を「異なる労働形態を組み合わせて働くこと」です。これは労働基準法上も問題がないとされています。今は会社に出勤して休憩を挟みながら所定時間勤務する形態が一般的ですが、これに自宅や社外での勤務を認めることで「職場と自宅、社外で所定時間勤務する」ことも可能になります。例えば、朝6時から8時に自宅で資料作成、子どもを保育所に送って10時から15時まで会社で執務、子どもを迎えに行き、食事を済ませて21時から22時までメール対応といった柔軟な働き方が実現できます。介護や育児などに取り組む社員にとって、仕事の合間に通院や役所での手続きなどもしやすくなり、満員電車での通勤を避けることも可能です。人手不足の中、働きやすい環境を整えることは今後さらに重要となるでしょう。

【社員紹介制度について教えてください】《令和元年5月掲載》

Q:IT業界の人事部で採用を担当しています。昨今、世の中では人材不足との声が高まる中、当社も採用で苦戦しています。先日、社長から「社員からの人材紹介を制度化して紹介者には報酬を出したらどうか」と提案がありました。制度化にあたって社内で検討すべき点や法律面での注意点を教えてください。

A:社員からの人材紹介を制度化して紹介者に報酬を出すという制度は、欧米では一般化しており日本でも徐々に広まってきています。自社の社風や業務内容を知る社員からの紹介なので、自社にあった優秀な人材を採用できる可能性が極めて高いことや、採用コストを抑えられるというメリットもあります。しかし、実際に導入した会社からは「うまくいかない」「成果が出ない」という声が多いのも事実です。これは「どのような人に来てもらいたいかが明確ではない」ことが主な原因と考えられています。この制度を導入するのであれば、社員による人材紹介制度を会社の業務として社内規程で定め、会社の本気度を示す必要があるでしょう。なお、紹介した社員への報酬は、職業安定法上は原則禁止ですが、給与として支払う場合は例外として認められています。

【無断欠勤者にはどう対応すればよいでしょうか?】《平成31年4月掲載》

Q:流通業で人事を担当しています。3週間ほど前に中途で入社した社員が1週間以上無断欠勤しています。仕事の改善点をアドバイスしたら翌日から出社しなくなったそうです。無断欠勤の2日目に人事から電話をしたところ無言で切られ、その後は電話に出ません。このまま懲戒解雇にしてもよいのでしょうか?


A:まずはさまざまな方法で出勤を督促すると同時に、欠勤者本人が無断欠勤に至った原因について配属職場に確認してください。もし本人と連絡が付けば、面談あるいは電話で無断欠勤の理由を尋ね、出勤を督促するとともに採用時に提示した労働条件や配属職場の対応に問題が無かったことも確認してください。本人と連絡が取れない場合には配達証明郵便などを利用して、記録に残る形で出勤の督促を繰り返し一定期間、本人に意思表示をする機会と時間を与えなければなりません。それでも出勤しない場合には、懲戒解雇という処置もやむをえませんが、その場合には客観的かつ合理的な理由があり、社会通念上相当であることが要求されます。会社側の対応がこれに該当している上で、就業規則に定めがあればそれに従い、定めがなければ本人にその旨を伝える必要があります。

【有給休暇取得の義務化について教えてください】《平成31年3月掲載》

Q:製造業で人事・労務を担当しています。現在、当社には正社員、契約社員、パート従業員の計約100名が在籍しています。2019年4月から年5日の有給休暇取得が義務化されるとのことですが、対象となる従業員の条件や事前の準備を知りたいです。また万一、違反した場合には罰則などあるのでしょうか?


A:この4月1日から全ての企業において、年10日以上の年次有給休暇が付与される全ての労働者(管理監督者、有期契約労働者、パートタイマーなどを含む)に対し、このうちの5日については付与された日から1年以内に使用者が時季を指定して取得させることが義務付けられました。違反した場合は30万円以下の罰金です。ただし、従業員が年5日以上有給休暇を取得している場合や計画年休により年5日以上の有給休暇を与えている場合は指定義務の対象外です。なお、時季指定に際しては、労働者の意見を聴取し、できる限りの労働者の希望に沿った取得時季になるよう意見を尊重する必要があります。国内の人手不足は深刻で、休暇取得による人員不足を新規採用によって補充することは困難でしょう。そのため労働者が多い企業では早めに計画して実施することをおすすめします。

【働き方改革関連法案】《平成31年2月号掲載》

Q:小売業の経営者です。先日、働き方改革関連法案が国会で可決成立したと聞きました。当社はいわゆるホワイト企業で、正社員・パート社員ともに有給休暇の消化率は毎年9割程度です。残業時間も正社員は月10時間未満、パートはほぼゼロです。とはいえ、今回の法改正に伴い当社でも必要な措置があれば対応したいので、まずは法改正の概要を把握したいと思っています。

A:数多くの改正事項が出てきた働き方改革ですが、重要なポイントは(1)長時間労働の改善(2)正規・非正規の不合理な待遇格差の是正の2点です。(1)は2019年4月1日から年次有給休暇を10日以上付与される労働者に対し、年5日取得の義務付け等、また管理監督者を含めた労働時間の客観的かつ適切な方法による把握が義務付けられます。なお中小企業における残業時間の上限規制の適用は2020年4月1日、60時間超の残業代の割増率の引き上げの適用は2023年4月1日からです。(2)は2020年4月1日施行(中小企業は2021年4月1日)となります。事業主は「労働時間の管理を厚生労働省で定める方法」によりこれまで以上に客観的な労働時間の管理や正規・非正規の待遇の見直しが必要となります。

【残業代を含む基本給について教えてください】《平成31年1月号掲載》

Q:社員10名の事務機器販売会社で人事総務を担当しています。当社は社長と私以外は営業職で、比較的給与水準が高いこともあり「残業代は基本給に含む」という運用をしてきました。つまり、これまで労働時間の把握をしてこなかったのです。昨今の社会の流れも踏まえ、今後は労働時間を管理し、残業代は基本給とは別にする方針です。ところで、もし過去の残業代を精算するとしたらどのような点に注意すればいいのでしょうか。

A:「残業代は基本給に含む」というルールが違法であるとは断定できません。計算根拠を示した定額残業代相当額を基本給に含む場合は、実際の労働時間から算定した時間外手当相当額をカバーしていれば違法とまではいえません。また、かなり高額な基本給を支給されていた事案では、時間外手当を含むことを認めた判例もあります。とはいえ、労働時間管理は賃金計算ばかりでなく、労働者の健康管理にも重要な役割を果たしますから、今後を考えれば正しい決定でしょう。なお過年度の残業代の計算は、各年度における社会保険料や税金の計算も必要ですし、当年度の一時金としても同様です。そのため税理士や社労士とよく相談して手続きを進めてください。

【自然災害による休業について教えてください】《平成30年12月掲載》

Q:製造業で人事を担当しています。当社はこれまで幸いなことに自然災害の影響を受けたことがありません。しかし、近年の地震や台風などの被害の大きさを見て、自然災害で業務ができない場合の対応を検討することになりました。工場の破損や計画停電などどうにもならない事情で休業する場合、従業員に対して手当の支払いなど対処の仕方を教えていただきたいです。


A:事業の正常な運営が困難になり休業する場合は「使用者責に帰すべき事由」による休業なので当然、休業手当の支払い義務が生じます。一方、天災事変等の不可抗力による工場の破損、計画停電など避けることが困難な事情の場合は「使用者の責に帰すべき事由」に当たらず、休業手当の支払い義務はありません。実際の給与計算では、休業手当が発生しない場合には休業日分の欠勤控除をすることとなりますが、事後的に有給休暇の取得を認めることも検討してください。天災事変等により休業手当の支払い義務が免除されるのは極めて限定的であり、会社設備が直接的な被害を受けていない場合も当然、休業手当の支払い義務は発生します。いざというときのために就業規則や労働協約を今一度、見直すとよいでしょう。

【業務委託契約について教えてください】《平成30年11月掲載》

Q:食品製造会社を経営しています。これまでは業務用がメインでしたが、一般消費者の方にも人気が出ている商品があり、個人向けのネット通販を始めることにしました。サイト制作やシステムの導入、メンテナンスは全て未経験なので、当面は社外の力を借りる予定です。その際には業務委託契約を結ぶことになると思うのですが、概要や注意点について教えてください。


A:専門的業務を外部発注するとき、多くは業務委託契約を締結します。これは主に民法における「請負」か「委任(準委任)」のいずれか、またはこれらの混在したものです。「請負」は仕事の完成を目的とし主に成果物の引き渡しを要件とするため、システム開発などは貴社の要求する仕様に合致するシステムを納入しなければ仕事は完成しません。また成果物に不具合が見付かった場合はそれを補修する義務があります。「委任(準委任)」は、事務の処理を目的とした契約で仕事の完成義務はありませんが、委任された事務について相応の注意をもって処理することと要求に応じて状況を報告する義務があります。ただし、事務処理のような役務提供であってもメンテナンスなどは結果に責任を負わせる場合もあります。

【職場での服装について教えてください】《平成30年10月掲載》

Q:IT企業の人事担当です。当社はビジネスカジュアルでの就業を認めています。ソフトウェアの開発が主な事業なのでエンジニア職が多く、特に夏場はTシャツにジーンズといったラフな服装が多いです。しかし最近、転職してきた40代の営業管理職に「服装が乱れている」と指摘されました。あまりルールで縛りたくはないのですが、どう事態を収めたらいいでしょうか。


A:ビジネスカジュアルという概念の定義はあいまいです。ですがら、親しみや好感を抱く人がいる一方で、乱れていると感じる人がいるという事態も当然、起こり得ます。カジュアルを認めてもその前提はビジネスシーンでの話なので、混乱を防ぐためには会社がある程度の目安を示すことは必要でしょう。近年、夏場のクールビズにより軽装が認知される社会環境が定着しましたが、ビジネスパーソンである以上、カジュアルが「ジャージにTシャツ」といった普段着とは違うものであることを全員の共通認識としなければなりません。例えば、服装のアイテムやその着こなし方、さらにはTPOによる好事例を調査し貴社独自の節度あるビジネスカジュアルというものを例示してはいかがでしょう。

【契約社員の無期転換について教えてください】《平成30年9月掲載》

Q:40代の会社員です。1年前から妻が契約社員として働き始めました。契約は1年ごとの更新で先日、初めての契約更新をしたようです。今年の春に、契約社員や派遣社員など有期の契約で働く人たちの無期転換が話題となり、うちの妻はどうなるのだろうと。気になりました。妻は条件によっては今後、転職も考えたいと言っており、概要を知って参考にしたいと思います。


A:平成25年の改正労働契約法に「無期労働契約への転換制度(無期転換ルール)」が盛り込まれました。同じ会社で5年を超えて働いた有期契約社員は、無期労働契約への切り替えを申し込めるというものです。適用開始は平成25年4月1日でしたので、最短で平成30年4月1日から無期転換の権利が発生した人がいることになります。無期契約社員とは、その名のとおり雇用契約期間の定めのない契約社員ですから、契約期間以外の労働条件は原則として変更されません。会社は正社員と同様の給与や賞与、退職金制度を適用する義務はありません。また無期転換を申し出ると契約終了のリスクはなくなりますが、有期契約の頃と比べて、ある程度は責任が重くなることや正社員への転換が難しくなることが予想されます。

【社員が死亡した際の手続きを教えてください】《平成30年8月掲載》

Q:IT企業で人事を担当しています。創業10年を前に会社全体で業務のマニュアル化を進めています。その中で、社員が死亡した際に必要な手続きについてマニュアルがないことに気付きました。社員の死などあってほしくはないですが、万一に備えて準備しておこうと思います。必要な手続きを教えてください。

A:社員の死亡という不測の事態に備えたマニュアルの作成は必要です。死亡原因の違いにより事務手続きは異なりますが、労働保険と社会保険の諸手続きは法令のとおり行います。遺族が行う手続きについても、要請があれば会社が申請の代行や支援に手を差し伸べることは大事なことです。また会社からの弔慰金の金額、死亡後に支払う退職金や賞与の支払い方法など、会社としての取り決め事項があれば就業規則に盛り込んでください。なお、死亡後に支給期の到来する給与・賞与・退職金などは相続税の対象となりますので所得税は控除しないこと、本人死亡後の支払い相手については、就業規則に「その者の収入によって生計を維持されていた者の請求により支払う」と記載することで早期に支払えるようにしておくとよいでしょう。

【「懲戒処分」について教えてください】《平成30年7月掲載》

Q:従業員100名ほどの介護関連企業で、今春から人事を担当しています。最近、正社員に加えてパート従業員の人数も増えており、人事関連の制度や運用についても実態に即して見直しをするよう命じられました。そこで改めて就業規則を見返したところ、私は懲戒処分について知識がないことが分かりました。従業員への懲戒処分について、基本的なことを教えてください。


A:一定の秩序を維持するために、会社は従業員に対して非行や秩序を乱す行為について改善命令や懲戒処分を行うことができるとされています。しかし、どのような行為が処分の対象になるかを就業規則にあらかじめ定めておく必要があります。基本的には「処分の根拠があり、合理的であること」「その行為に対する処分が重すぎないこと」「特定の従業員だけを対象としていないこと」「手続きが適正であること」などが求められます。懲戒処分の種類は軽いものから、1.戒告・譴責(けんせき)2.減給 3.出勤停止 4.降格5.諭旨解雇 6.懲戒解雇 に分けられます。従業員に反省と行動の改善を促す懲戒処分ですが、ルールに反した処分を行えば労使トラブルに発展しかねません。常に明瞭で公平な運用を心掛けましょう。 

【「キャリアアップ助成金」について教えてください】《平成30年6月掲載》

Q:IT関連の会社を起業し2年目となる経営者です。売り上げが順調に伸びており、社員やアルバイトの人数も増える中、人事面の体制整備が課題となってきました。経営者仲間から「キャリアアップ助成金を活用するといいよ」という声をよく聞くのですが、具体的にはどのような制度なのでしょうか。

A:「キャリアアップ助成金」とは、労働者の意欲・能力を向上させ、事業の生産性を高め、優秀な人材を確保することを目的として、有期契約労働者・短時間労働者・といった非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップなどを促進するため、正社員化や処遇改善の取り組みを実施した事業主を国が助成する制度です。助成内容は「正社員化」「賃金規定等改定」「健康診断制度」「賃金規定等共通化」「諸手当制度共通化」「選択的適用拡大導入時処遇改善」「短時間労働者労働時間延長」の7つのコースとなっています。助成を受ける条件の詳細は各コースで異なりますが、共通条件として「雇用保険適用事業所であること」「雇用保険適用事業所ごとにキャリアアップ管理者を置いていること「キャリアアップ計画を作成・提出して労働局の認定を受けること」が必要です。

【「みなし残業代」と「みなし労働時間制」の違いは?】《平成30年5月掲載》

Q:事務機器メーカーに入社して3年目の営業担当です。最近、裁量労働制が話題になっていますが、自分はどのような制度で働いているかを確かめてみたところ私の場合は「みなし労働時間制」というのが適用されていました。求人広告などでは「みなし残業代」というのも見かけますが、同じものなのでしょうか?

A:みなし残業代は、定額残業代または固定残業代と呼ばれるもので法的な制度ではありません。また決まった残業代を払えばどれだけ働かせてもよいというものではなく、対象となる時間を明確に示し、これを超えた分については超過勤務手当を支給しなければならないため、実際の労働時間をきちんと把握することが運用に際しての必須条件です。

一方、みなし労働時間制は労働基準法に明記されている制度で、実際の労働時間ではなく所定労働時間または業務に通常必要とされる時間を働いたものとみなす制度です。営業職のように社外で働く職種や労働時間を働く者の裁量に委ねる必要のある職種に限って認められており「事業場外労働制」「専門業務型裁量労働制」「企画業務型裁量労働制」があります。なお、みなし労働時間制では休日や深夜には割増賃金が発生します。

【内定者が留年した場合について教えてください】《平成30年4月掲載》

Q:製造業で人事を担当しています。4月に入社予定だった大学生の内定者が単位不足で卒業できず、留年することになりました。開発部門の有望な戦力として時期をずらしても入社してほしいと思っており、本人も入社を希望しています。10月に卒業できるそうで、それまで学業と並行して働いてもらおうと考えています。その場合、正社員として雇用してもいいのでしょうか。

A:会社と本人の間で合意すれば、正社員として雇用することに問題はありません。しかし、いくつか確認すべき点があります。まず、大学側が在学中の学生について正社員での就労を認めるかどうか。また学業を続けながら正社員として勤務することが可能かどうか。さらに本人の入社意思が変わることも考えられますし、10月に卒業見込みとはいうものの現時点で確証はなく、卒業がさらにずれ込む可能性も否定できません。会社側の採用環境が大きく変わった場合でも、正社員であれば解雇は難しくなります。最後に、雇用保険において学生は労働者とは認められず、卒業見込み証明書があってはじめて加入できます。こうした経緯を踏まえて本人ともう一度、相談してみてはいかがでしょうか。

【副業を解禁する際の注意点を教えてください】《平成30年3月掲載》

Q:IT企業で人事を担当しています。昨今の流れに乗って、当社でも社員の副業を認めるよう就業規則を改訂しました。社長は社員の副業を歓迎する意向で、すでに何人かの社員から副業を持つ前提での相談を受けています。その中でも雇用保険や社会保険についての相談が多いのですが、自分もこのようなケースは対応したことがなく、うまくアドバイスできません。当社の実務面も含め、社員が副業をする際の注意点を教えてください。

A:副業の形態は正社員やパート・アルバイト、派遣社員など多岐にわたり、状況に応じた対応が必要です。雇用保険は主たる賃金を得る事業主のもとでのみ加入することになります。また労災保険は勤務時間等に関係なく、副業先でも必用があれば利用できます。なお副業先での勤務時間が社会保険の加入要件を満たす状況となれば、貴社の勤務時間と合算すると、かなりの長時間労働が生じていることになります。副業の申請を認めた場合でも、貴社には社員が健康に働くための配慮義務が求められます。そのため長時間労働を防ぐ許可条件を設けることをおすすめします。社員が副業を持つ際は本人の状況を聞き、専門家に相談しながら進めましょう。

【「競業避止義務」について教えてください】《平成30年2月掲載》

Q:ソフトウェア開発企業で人事を担当しています。設立から数年、少人数で仲良くやっているのですが、この度、残念ながら営業担当の社員が退職することになりました。退職の手続きを進めるにあたり、社長から「競業避止の誓約書を取っておいて」と言われました。しかし、退職以降もずっと同業他社で働かないように誓約させるのは無理があるように思います。退職予定の社員にも難色を示されました。どうすればよいでしょうか。

A:競業避止義務とは、在職中にその会社と競業する業務を行ってはならないという義務で、労働契約における信義誠実の原則に基づくものです。よって、本来は退職後には生じない義務ですが、退職者が会社独自のノウハウや機密事項、顧客情報を競合他社に持ち込むことは会社にとって大きなリスクです。その反面、退職者の転職や再就職に不自由を科すことは、職業選択の自由を不当に制限することにもなりかねません。退職後に競業避止義務を負ってもらう場合は、その必要性や合理的な理由、避止の対象となる業務の範囲、制限の対象とする時期や地域などを具体的に明示し、本人の理解と合意を得た上で誓約書を取り交わすのがよいでしょう。

【タイムカードの不正打刻への対処策について】《平成30年1月掲載》

Q:保険代理店の営業所で経理事務を担当しています。当社はタイムカードで出退勤を管理しています。先日、ある社員が定時にタイムカードを押さずに会社を出て、私用を済ませた2時間後に会社に戻ってきて退勤の打刻をするのを見てしまいました。会社にはまだ報告していません。どうすればよいでしょうか。

A:出退勤の管理をタイムカードで行う場合、打刻記録は労務管理上の客観的記録となり、会社にとって大変重要な基本データです。単なる打刻忘れならば不正ではありませんが、間違った退勤時刻がタイムカードに残れば、不良なデータだけが保存されることになります。また、もし本人が故意で行ったのであれば不正行為であることは明らかです。いずれにせよ現認した事実を報告しなければなりません。その後の処置については、上司が本人に確認の上で注意をすることになるか、あるいは本社の人事部が面談を含めた調査をすることになるでしょう。営業所の勤務者のうち、事務所での勤務時間が長い事務職はこうした場面に遭遇する可能性が高くなります。タイムカードの記録が勤怠管理に重要なことを所内に周知して、打刻忘れを減らす活動をしてみてはいかがでしょうか。

【「改正職業安定法」の注意すべき点とは?】《平成29年12月掲載》

Q:流通業で人事を担当しています。来年度に向けて、店舗の店長候補やバイヤー、本社の管理部門など、幅広い職種で新卒と中途の採用を予定しています。そんな中、来年早々に職業安定法が改正になり、求人情報を出す際のルールが厳しくなると聞きました。具体的にどのような点に注意すればよいのでしょうか。

A:改正職業安定法のうち、労働者を募集する企業が注意すべき点は平成30年1月1日施行の部分です。具体的には求人情報と異なる条件を適用する場合や変更した場合、労働条件を明示しなければならない時点を「変更等以降可能な限り速やかに(労働契約締結の前に)明示する」ことと定められました。また固定残業代の詳しい内容、裁量労働制を採用する際のみなし労働時間、試用期間に関する事項、募集者の氏名または名称、派遣労働者として雇用する場合等などが、新たに労働条件通知書で書面明示しなければならない事項として追加されました。労働条件の明示が正しくないことは労働基準法違反のため企業側は指摘を受ける可能性があります。さらに新規学卒採用には、内定時に労働条件の書面交付をすべきという指針も出ているので詳細は専門家にご相談ください。

【内定辞退に関する電話連絡対策を教えてください】《平成29年11月掲載》

Q:広告代理店で人事を担当しています。売り手市場を受け、今年は内定辞退者が多いようです。基本的には電話で内定辞退を知らせてくる学生が多いのですが先日、初めて「内定辞退を撤回したい」という学生がいました。その学生には「口頭とはいえ内定辞退を承諾しているため、すでに内定者ではない」と伝えましたが、同様のケースに備えて対応策を教えてください。

A:内定辞退の連絡が電話による場合、その電話の主が本当に本人か否か、また内定を辞退する意思表示を受理した証拠も残らないため、電話連絡だけで決めると想定外のトラブルに発展する危険があります。そこで内定を出す時点で「万が一、内定を辞退する場合は書面による申し出に限る」として「内定辞退書」の提出を求め、さらに「内定辞退を撤回することは原則として不可」と明確に通知しておくとよいでしょう。なお、貴社には内定辞退の撤回に応ずる義務はありませんが、優秀な社員でも新入社員の頃には何かしらミスを犯した経験はあるものです。内定辞退の撤回は、学生の就職活動では大きなミスに違いありませんが、申し出た学生に再面談の機会を与えるなどの配慮も検討してみてはいかがでしょうか。

【課長になったら残業代は出ないのですか?】《平成29年10月号掲載》

Q:40歳の専業主婦です。広告関係の会社で営業職をしている夫がこの春に課長になりました。会社からは「課長は管理職だから残業代は出ない」と言われたそうです。勤務時間は相変わらず長く、深夜まで残業して帰宅しても残業代はでていないようです。毎月のお給料の手取り額も以前と変わらないか、逆に減っている月もあります。夫の体も心配ですし、納得がいきません。

A:会社内で課長職など管理職の地位にある労働者でも、労働基準法上の「管理監督者」に当てはまらない場合があります。管理監督者とは、労働条件の決定、その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者をいい「労働時間による管理には向いていない」という理由から労働基準法で定められた労働時間、休憩、休日の制限を受けません。過去の裁判例では管理監督者であるかどうかは役職名ではなく、その職務内容、責任と権限、勤務態様などの実態によって判断されています。なお管理監督者であっても労働基準法により保護される労働者であるため、労働時間の規定が適用されないとしても、どれだけ働いても構わないわけではなく、健康を害するような長時間労働をさせていけないことに変わりありません。

【「退職願」「退職届」「辞表」の違いを教えてください】《平成29年9月掲載》

Q:この春、事務機器メーカーに入社しました。入社して2カ月ほど経った頃に仕事が辛くなり、会社をやめようと思った時期がありました。先輩や上司のフォローのおかげで今は仕事に楽しく取り組めるようになりましたが、そのときに「退職願」と「退職届」と「辞表」はいったい何が違うのか?と、ふと疑問に思いました。言い方が違うだけで内容は同じなのでしょうか?

A:「辞表」という言葉はよく耳にしますが、これは会社役員や公務員など委任や任用による契約を辞める場合に用いるもので、一般的な労働契約の場合は「退職願」や「退職届」を使います。退職願とは、その名のとおり労働者側から「退職を願い出る」もので、会社が退職の願い出を聞き届けるまでは撤回は可能と考えられます。このため自己都合による退職の場合は、退職願を使います。一方の退職届は「退職を届け出る」もので、会社に対する本人の最終的な意思表示であり、提出時点で雇用契約の終了となるため通常、撤回はできません。解雇や退職勧奨など会社都合で辞める場合には退職届を提出します。失業給付を受ける際の退職理由では、自己都合か会社都合かで給付内容が異なるので注意しましょう。

下村典正税理士事務所は
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