「税のマメ知識」

税金は国会等で決められます。増税、減税その季節になると色々報道機関等で話題になります。税金が私達の生活や経済活動の中でどのように影響が有るのか、わかりやすくお伝えしたいと思います。

【新紙幣の発行と税金の関係】《令和6年10月掲載》

20年ぶりに新紙幣が発行されました。その目的のひとつに紙幣の偽造防止があります。今回も3Dホログラムなど、最新の技術が使用されています。また別の目的としては「タンス預金のあぶり出し」が考えられます。旧札の流通が少なくなると、タンス預金を新札に交換したくなるのが心情です。しかし多額のお金を交換すると、そこに記録が残って税務署などに財産が把握されることにもなります。また国税庁では「国税総合管理(KSK)システム」を使って全国の国税局と税務署をネットワークで結び、情報を一元管理しています。例えば、ある家族に相続が発生した場合、被相続人(亡くなった人)の生前の収入からすると、3億円ほどの財産があってしかるべきだとKSKシステムが予想したのに対し、申告書には1億円と記載されていたとします。被相続人が生前に使ったのか、またタンス預金などで2億円ほど隠し持っているのか。それを確かめるために税務調査官が真実を追求する流れとなります。

【定額減税とは?】《令和6年9月掲載》

 2024年6月から所得税と住民税の「定額減税」がスタートしました。これは家計に影響を及ぼす物価高などの対策として「国民の負担を軽減する」ことを目的とした、1年限り行われる制度です。日本国内に住所があり、年間の所得金額が1805万円以下の人が対象で、納税者本人だけでなくその配偶者などを含めた扶養親族も対象となります。その額は1人あたり所得税から3万円、住民税からは1万円の合計4万円です。分かりやすく言えば、給与などが支給される際に所得税や住民税が減税されて、受取金額が多くなるという仕組みです。自営業などの事業所得者の場合は、予定納税や確定申告の際にその適用を受けることができます。さらに「定額減税によって住宅ローン控除やふるさと納税の基準が変わってしまうのでは?」と心配する人もいるかと思いますが、これらについては基本的に影響ありません。また所得税や住民税の給付から減税しきれない世帯には、その差額が「給付金」として支給されます。

【株取引きで損失がでた場合には】《令和6年8月掲載》

株取引きで利益が出たら税金がかかります。では損失を出したらどうなるのでしょうか?株取引を特定口座の「源泉徴収あり」で行っていれば同じ証券会社内で生じた利益と損失は自動的に税額が計算されます。しかし証券会社が異なる場合は、確定申告をしないと損益通算をすることができません。また株の損失は「3年間繰り越す」ことができます。つまり翌年以降に株で利益を出したときは、相殺することができるのです。ただし株の損失を繰り越すためには、多くの会社員のように確定申告を必要としない人の場合でも、確定申告が必要となります。「確定申告なんて面倒だな」と思われるかもしれませんが、申告をして繰り越しをしておかなければ、株の損失はその年でバッサリ切り捨てられてしまいます。ちょっと面倒かもしれませんが、その後、損失を取り返したときに「あのときちゃんとしておけばよかった・・・」と後悔しないためにも、確定申告はきちんとしておいたほうがいいですね。

【「もしも」のときの頼もしい制度が改正されます】《令和6年7月掲載》

取引先の不測の事態は、できるだけ避けて通りたいものです。しかしもしも多額の売掛金が回収できない状況になったら、事業継続は難しくなり、連鎖倒産という最悪の事態に陥るかもしれません。このような「もしも」のときの資金調達として「中小企業倒産防止協会」という制度があります。毎月5000円から20万円の範囲で積み立てを行い、現状では800万円(掛け金の40倍で掛け止めも可)まで、積み立てることができます。またメリットとして、掛け金は税法上、法人の場合は損金、個人の場合は必要経費に算入することができます。そして一番気になる「もしも」のときには、積み立てた掛け金の10倍の範囲内(最高8000万円)で、回収が困難となった売掛金債権等の額以内の貸し付けが「無担保」「無保証人」で受けられます。ただし2024年10月1日以降については改正があり、一度解約して再加入する場合、解約後の2年間は掛け金を損金または必要経費に算入することができなくなります。

【固定資産税が6倍になるかも!?】《令和6年6月掲載》

「固定資産税」は誰もが耳にしたことのある税金のひとつではないでしょうか。しかしその計算方法について詳しく知っている人は少ないかもしれません。固定資産税は課税標準額に1.4%の税率を乗じて計算します。この課税標準額を減額する方法のひとつに住宅用地特例という措置があります。これは住宅用地のうち住宅1戸につき200平米までの部分を「小規模住宅用地」といい、課税標準額が評価額の6分の1となる制度です。しかし2023年12月13日に施行された法律により、空き家を所有している人で、次の場合にはこの特例措置を受けられないこととなりました。それは空き家の管理を適切にしておらず、倒壊の恐れや衛生面の危険性など近隣への被害が懸念される「特定空き家」に指定された場合や、その前段階の「管理不全空き家」として行政から勧告を受けたにもかかわらず、改善がなされなかった場合です。そのため必要に応じて売却、取壊し、賃貸などの選択肢を検討してみましょう。

【ご存知でしたか?ゴルフをすると税金がかかることを】《令和6年5月号掲載》

日本にはおよそ50種類もの税金があります。今回はその中でもゴルフについてお話しします。例えば、友人とプライベートでゴルフをする際にも「ゴルフ場利用税」という税金がかかります。ゴルフ場利用税は、ゴルフ場が開発許可や道路整備など行政サービスと密接な関係があることや、他のスポーツ施設と比較して利用料金が高額であることから、その利用者には「税金を納める力がある」とされ、標準税率として1人1日につき800円を利用者が負担するものです。ただし18歳未満の方、70歳以上の方、障害者の方などについては、非課税となっています。またゴルフ場によっては、天然温泉が楽しめる入湯施設もありますが、その場合には「入湯税」がかかります。入湯税は、鉱泉浴場所在の市町村が課する目的税であり、標準税率として1人1日につき150円を利用者が負担するものです。その使途としては、環境衛生施設や鉱泉源の保護管理施設などの整備、観光の振興などに要する費用に充当されます。

【実は会社員にもあるんです!】《令和6年4月掲載》

「個人事業主は、経費を使って税金を少なくできるからうらやましい」といった話しを会社員から聞くことがあります。しかし果たしてそれはどうでしょうか?所得税は、所得に税率をかけて計算します。所得とは、個人事業主では売り上げから経費を引いた金額です。会社員は、商談時の接待費などは会社が負担してくれるため給与が所得となります。しかしここが問題ですね。いくら会社が経費を負担してくれるとはいっても、食事をしながら部下の相談を受けるなど、自腹で支払うことも多々あります。そこで会社員などには、そういった必要経費を考慮した「給与所得控除」があります。仮に年収が500万円であれば、144万円も「給与所得控除」があります。自腹とはいえ、月々12万円も控除があるわけです。では「個人事業主が法人成りをして役員給与をもらっつたら」どうでしょう。もちろんこのケースも「給与所得控除」は受けられ、そのほうが節税となる場合もあります。何か不明な点があればお気軽にご相談ください。

【富裕層の申告漏れが過去最高】《令和6年3月掲載》

国税庁は令和4事務年度の「所得税および消費税調査等の状況」を発表しました。実地調査の件数、非違件数、申告漏れ所得金額の総額および追徴税額の総額は増加し、その1件あたりの申告漏れ所得金額などについても高水準とのことでした。主な取り組みとしては、富裕層に対する調査は増加し、申告漏れ所得金額も過去最高だった昨年を上回る980億円に上りました。また海外投資やインターネット取引(暗号資産等取引を含む)に対する調査では、いずれも申告漏れ所得金額は高水準でした。このような調査をする際は事前に国外送金等調書、国外財産調書、租税条約等に基づく情報交換制度などを活用し、入手した情報を分析してから積極的に調査を行っているようです。今年度の申告漏れ上位の業種は経営コンサルタント、くず金卸売業、ブリーダーと続き、1位の経営コンサルタントの1件あたりの申告漏れ所得金額は3367万円、追徴税額は676万円でした。ちなみに前年度の1位も経営コンサルタントでした。

【相続登記が義務化されます】《令和6年2月掲載》

2024年4月1日から相続登記が義務化されます。登記簿を見ても所有者が不明な土地が全国に多数あり、周辺の環境悪化や公共工事が阻害されるなどの社会問題を解決するために義務化されることになりました。これにより相続人は、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に相続登記をすることが義務となりました。正当な理由がないのに相引き渡すことができる相続登記をしない場合は、10万円以下の過料が科される可能性があります。また2024年4月1日より前に相続した不動産も義務化の対象となるので要注意です。相続人の間で遺産分割の話し合いが難しい場合には「相続人申告登記」という簡易な手続きを法務局で行い、義務を果たすこともできます。さらに「遠くに住んでいて利用する予定がない」などの場合は、相続により取得した土地を手放して国に引き渡すことができる「相続土地国庫帰属制度」というのもあります。相続税の申告が必要ない人でも、不動産を相続した場合は必ず相続登記を行いましょう。

【段階的に変わるビールの税率】《令和6年1月掲載》

  先日、国税庁の税務調査を受けた地ビールの製造販売会社が、過去3年間に出荷した缶ビールについて「発泡酒に該当する」と指摘を受け追徴課税されたようです。わが国では、その製造方法や原料によってさまざまな酒類に分けられて税金がかかります。発泡性酒類については「ビール」「発泡酒」、第三のビールとも呼ばれる「その他の発泡性酒類」に分けられます。ビールと発泡酒の違いは、原料である麦芽の使用割合により区分されます。また麦芽の使用割合だけではなく、その原料や製法によって税率が細かく分けられて複雑です。2023年10月から、この複雑な体系をより簡単なものに一本化することなどを目的に、2026年までに段階的に税率が変更されます。350ミリリットル缶に換算すると、改正によりビールでは約6円引き下げられ、第三のビールは約9円引き上げられて、これまで約32円あった差が約16円まで縮りました。3年後に一本化したときは350ミリリットル缶では約54円の酒税となる予定です。

【火災保険金に関する税金の取り扱い】《令和5年12月掲載》

万が一のときのために個人で火災保険に加入している家庭も多いと思います。不幸にも火災が発生してしまった場合、支払われる保険金は損害を埋め合わせる資金であるため、所得税法では非課税とされています。また支払われた保険金が実際の損害額よりも少なく、その保険金だけで損害の全てを補うことができなかった場合は「雑損控除」として確定申告をすれば、税金が還付されることもあります。しかしながら個人が小売業などの事業を営んでいる場合、例えばその店舗において火災が発生して商品等が消失し保険金を受け取った場合には、その保険金は事業収入として計上しなければなりません。つまりその保険金は、税金の申告対象となるのです。一方、法人契約の火災保険の場合、例えば不動産賃貸業などを営んでいる会社の建物が、火災に遭った際に支払われる保険金は、全て課税の対象となります。このように契約形態の違いなどによって、支払われる保険金に関する税金の取り扱いもさまざまとなります。

【税収が3年連続で過去最高】《令和5年11月掲載》

2022年度の財務省の発表によれば、税収は前の年度よりも4兆995億円ほど増えて71兆1374億円となりました。70兆円を超えたのは初めてで、3年連続で過去最高を更新しています。税収が増えた要因としては、物価高による消費税収が増えたこと。コロナ禍からの企業業績の回復による法人税収が増加したこと。さらには賃上げの動きが広がったことによる所得税収が伸びたこと。いわゆる基幹税であるこの3つの税収が、増加したことが要因と考えられます。税収で一番多かったのが消費税の23兆793億円、次いで所得税の22兆5217億円、法人税の14兆9398億円で、この基幹税の合計で60兆円を上回っています。リーマンショック後に一番落ち込んだ2009年度の38.7兆円と比較すると、約22兆円も上回っています。一方で歳出については、新型コロナウイルス感染症や物価高騰に対応する予算を計上しながらも、結果的に使う必要のなくなった不用額が11兆3084億円と過去最大となりました。

【小規模企業共済による将来の備えと節税】《令和5年10月掲載》

     「小規模企業共済制度」をご存知でしょうか。これは小規模企業の経営者や役員、個人企業主などのための、積み立てによる退職金制度です。この制度は「独立行政法人中小企業基盤整備機構」が運営しています。掛け金が全額所得控除できるため節税効果が高く、その掛け金は毎月1000円から7万円まで、500円単位で自由に設定することができ、加入後の増額または減額も可能です。廃業や退職時等の共済金の受け取り方法は「一括」「分割」「一括と分割の併用」が可能で一括の場合は退職所得扱い、分割の場合は公的年金等の雑所得扱いとなるため、共済金を受け取るときも税制のメリットがあります。また資金繰りなどが一時的に厳しくなったときは解約ではなく、掛け金の7~9割の範囲内で事業資金の貸付制度を利用することができます。貸付制度は即日の貸し付けも可能であり、しかも低金利なので安心して利用することができます。多くのメリットがある制度なので、未加入の方は一度、検討してみてはどうでしょうか。

【信託型ストックオプションの課税について】《令和5年9月掲載》

   国税庁はストックオプションに対するQ&Aを公開しました。その中で信託型ストックオプションについて「権利行使時に給与として課税する」ということを示しました。信託型ストックオプションとは、従業員が自社株式を購入する価格を会社側が設定した上で信託し、信託会社が従業員に配布する仕組みであり、スタートアップ企業(新興企業)を中心に導入されています。これにより従業員が得た利益は、比較的税率が低い譲渡所得(20%)にあたるとの認識で利用する会社も増えていました。しかし今回の国税庁での説明では、給与所得(最高税率約55%)にあたるとのこと。国税庁はこれについて従来の取り扱いを変更したものではないとして、会社側が与えた権利を従業員が行使して株式を取得した時点で実質的な給与にみなされ、すでに行使済みの従業員に対しても会社側がさかのぼって所得税の源泉徴収の必要があるとしました。今回の説明により多くの企業でさまざまな対応が求められそうです。

【国外財産調書の状況について】《令和5年8月号掲載》

所得税法に規定する「非永住者以外の居住者」は、その年の12月31日において5000万円を超える国外財産を有する場合、その財産の種類、数量、価額等を記載した国外財産調書を所轄税務署長に提出しなければなりません。国税庁の発表によると2021年分の提出状況は、総提出件数が12109件、総財産額は5兆6364億円で8年連続で増加しており、集計が始まった2013年以降いずれも最高となりました。財産の種類としては有価証券が最も多い3兆5695億円、次いで預貯金が7591億円、建物が4474億円の順となっています。この調書は自主的に自己の情報を記載し提出するものなので、特例措置がもうけられています。期限内に提出した場合、所得税の申告漏れが生じたときでも加算税が5%軽減されます。しかし期限内に提出がない場合、または提出した調書に記載すべき財産の記載がない場合は、その財産に係る所得税の申告漏れが生じたときには、加算税が5%加重されるなどの措置があります。

【2023年度の税制改正について】《令和5年7月号掲載》

今回は2023年度の税制改正のポイントについてお話しします。個人所得課税については、家計の資産を貯蓄から投資へと資産所得倍増につなげるべく、NISA制度の拡充と恒久化措置が講じられました。それにより「つみたて投資枠」については年間上限枠を120万円に拡充し、新たに設けられた「成長投資枠」の年間投資上限額を240万円に拡充するとともに「つみたて投資枠」との併用が可能となりました。資産課税については、相続時精算課税制度における基礎控除(年110万円)の創設により、この制度の選択後も毎年110万円以下の贈与については贈与税の申告が不要。また資産移転の時期に対する中立性を高める観点より、暦年課税における相続前贈与の期間を3年から7年に延長したほか、延長した期間に受けた贈与のうち100万円については相続財産に加算しない見直しが行われました。この他、法人課税については研究開発税制の見直し、先導的人材投資に関する税制の創設なども行われました。

【インボイス制度の経過措置について】《令和5年6月号掲載》

2023年10月1日よりインボイス制度が開始されます。これにより適確請求書発行事業者(登録事業者)のみが適確請求書(インボイス)を交付することができます。制度の開始後は、これまでの請求書等の保存に代えて適格請求書等の保存が仕入税額控除の要件となります。登録事業者でない免税事業者からの課税仕入れについては、仕入税額控除を行うことができなくなります。しかし2023年10月から2029年9月までは、免税事業者からの課税仕入れについて、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる経過措置がもうけられています。具体的には、2023年10月1日から2026年9月30日までは仕入税額控除の80%、2026年10月1日から2029年9月30日までは50%を仕入税額として控除できます。ただしこの適用にあたっては、免税事業者等から受領する区分記載請求書等と同様の事項が記載された書類の保存と、その内容を記載した帳簿の保存が必要となります。

【いろいろな金額の壁】《令和5年5月号掲載》

「103万円の壁」や「130万円の壁」という言葉をみききした方も多いと思います。最近では「106万円の壁」という言葉もありますが、今回は前者の2つの金額の壁についてお話します。103万円は税法上の扶養の壁、130万円は社会保険上の扶養の壁です。給与による年収が103万円以下であれば所得税はかかりません。また103万円以下でアルバイトをしている子どもや配偶者を扶養に入れることができます。配偶者の場合は、103万円超であっても201.6万円未満であれば配偶者特別控除という制度で38万円から1万円までの控除を受けることが可能です。一方、130万円の社会保険上の壁は、130万円までの収入であれば、扶養者の社会保険上の扶養に入ることができます。よくあるケースですが、配偶者が扶養の範囲内で働きたい場合は「所得税がかからない程度なのか、社会保険の扶養範囲内までなのか」など、いろいろな金額の壁を考えながらワークライフバランスと家計にベストな方法を検討する必要があるでしょう。

【決算が近づいてからでもできる節税対策】《令和5年4月号掲載》

  「今期は利益が出そうなので、決算直前でもできる節税対策はないでしょうか」という相談を受けました。このような場合の節税対策のひとつに「短期前払費用の特例」という制度があります。通常では費用の支払をしても、サービスの提供を受けていない来期分の「前払費用」については、当期の経費に算入することができません。しかし一定の条件を満たせば当期の経費とすることができます。その条件とは「契約によって継続的にサービス提供を受けるために支出したものである」「支払日から1年以内にサービス提供をうけるものである」「支払った金額を継続してその事業年度の経費にしている」です。例えば、決算月などに1年分の事業所家賃を前払いする契約に変更し、その一年分の家賃を支払えば経費として参入することができます。なお支払利息のように、収益と対応させる必要があるものについては認められません。また期間限定の広告代など継続的でない場合も特例が適用されないことがあるので注意が必要です。

【相続は総合的に判断する必要が】《令和5年3月掲載》

  今回は夫婦と子どもが2人の4人家族だった場合の相続について考えてみましょう。夫婦の一方が亡くなり、残された配偶者と子どもが相続をしました。これを「1次相続」といいます。その後、残された配偶者も亡くなり、子どもが相続をしました。これを「2次相続」といいます。肝心なことは、1次相続での財産の分け方しだいで、1次と2次の合計の相続税額が数百万円も変わってくる場合があるということです。例えば遺産が一億6000万だったとして、次のパターンで計算してみました。(1)1次相続:残された配偶者が8000万円・子が4000万円ずつ/2次相続:子が4000万円ずつ、(2)1次相続:残された配偶者が全額の1億6000万円/2次相続:子が8000万円ずつ。それぞれの合計相続税額は(1)1330万円、(2)2140万円となり810万円の差が出ます。では(1)の方法が良いのかといえば、必ずしもそうとはいえず、遺産の内容や家族状況によってさまざまなので総合的に判断することが大切です。

【国税も手軽にPay払い】《令和5年2月掲載》

国税は、申告した税額に基づき納税者自身が期限までに納付する必要があります。これまでは金融機関の窓口で納付したり、指定した口座からの振替えによる納付がほとんどでした。ところが最近ではクレジットカードやインターネットバンキングなどを利用した納付、eーTaxによるダイレクト納付、コンビニでのバーコード納付などといったいろいろな方法があります。

これに加えて2022年12月1日からスマートフォンのアプリによる「Pay払い」が可能になりました。これまでにもクレジットカードを使った納付はありましたが、利用者が金額に応じた手数料を負担する必要がありました。しかしPay払いでは手数料は発生せず、利用者に負担が生じません。現在、利用可能なPay払いは6種類あります。「アカウント残高を利用した支払方法のみ利用可能」で、一度の納付での上限額は30万円です。キャッシュレス法をもとに税金など国や市町村への支払いのキャッシュレス化はますます進んでいくでしょう。

【中小企業向けの「賃上げ促進税制」とは】《令和5年1月掲載》

経済協力開発機構の調査によると、日本の平均賃金は1990年からほとんど上がっていない状況です。ところが欧米では1.5倍近く上がっています。政府は成長と分配の好循環による新しい資本主義を実現するため企業による賃上げを考えており、民間企業の賃上げを支援すべく2022年4月1日より開始する事業年度を対象に「賃上げ促進税制」がスタートしました。中でも中小企業向けでは、青色申告書を提供する中小企業等については2022年4月1日から2024年3月31日までの間に開始する各事業年度(個人事業主は2023年および2024年の各年)において、前年度比で給与等を1.5%以上増加させた場合は15%の税額が、2.5%以上増加させた場合は30%の税額が控除されます。さらに教育訓練費を前年度比で10%以上増加させると10%の控除が上乗せされます。ただし税額控除額の上限は税額の20%です企業の節税と従業員のモチベーションアップの相乗効果が期待できそうですね。

【納めた税金が間違っていたことに気づいたら?】《令和4年12月掲載》

  今回は「誤って税金を多く納めていたり、もしくは少なく納めていたことに気がついた場合の対処方法」についてお話しします。計算間違いなどで税金が正しく納められていなかった場合には当然、訂正をすることになります。しかし「多く納めていた場合」と「少なく納めていた場合」とでは訂正の仕方が異なります。まず「多く納めていた場合」は「更正の請求書」という書類に訂正事項を記載して提出します。その際の注意点は、原則として法定申告期限から5年以内におこなわなければならないということです。一方で「少なく納めていた場合」は「修正申告書」を提出します。こちらも法定申告期限から5年以内ですが、悪質な行為が発覚した場合は7年以内まで延長されます。この場合、追加の税金を納めるとともに過少申告加算税(悪質な行為の場合は、過少申告加算税に代えて重加算税)や延滞税などの附帯税を納付する必要があります。なおこの附帯税は損金(いわゆる経費)には算入することができません。

【金地金を売却した時の税金】《令和4年11月掲載》

今回は「8年前に購入した金地金を売却したら110万円の儲けが出た」というケースでの「譲渡所得」についてお話します。譲渡所得とは資産の譲渡による所得をいいます。対象となる資産には土地、建物、ゴルフ会員権などが含まれます。営利を目的として継続的に金地金の売買をしている場合は譲渡所得ではなく「事業所得」や「雑所得」となりますが、会社員などが持っている金地

金を売却した場合は原則、総合課税の譲渡所得となります。これは所有期間が「5年以内である短期」と「5年超である長期」とに分けられます。計算方法は「金地金の譲渡益」と「その年の金地金以外の総合課税の譲渡益」を足したものから「譲渡所得の特別控除」50万円を引きます。また「短期」の場合は全額が課税の対象になり「長期」はその2分の1が課税の対象となるという違いもあります。今回のケースは長期なので、110万円から特別控除額の50万円を引いた60万円の2分の1である30万円が譲渡所得の金額となります。

下村典正税理士事務所は
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東京税理士会所属

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