税金は国会等で決められます。増税、減税その季節になると色々報道機関等で話題になります。税金が私達の生活や経済活動の中でどのように影響が有るのか、わかりやすくお伝えしたいと思います。
国税は、申告した税額に基づき納税者自身が期限までに納付する必要があります。これまでは金融機関の窓口で納付したり、指定した口座からの振替えによる納付がほとんどでした。ところが最近ではクレジットカードやインターネットバンキングなどを利用した納付、eーTaxによるダイレクト納付、コンビニでのバーコード納付などといったいろいろな方法があります。
これに加えて2022年12月1日からスマートフォンのアプリによる「Pay払い」が可能になりました。これまでにもクレジットカードを使った納付はありましたが、利用者が金額に応じた手数料を負担する必要がありました。しかしPay払いでは手数料は発生せず、利用者に負担が生じません。現在、利用可能なPay払いは6種類あります。「アカウント残高を利用した支払方法のみ利用可能」で、一度の納付での上限額は30万円です。キャッシュレス法をもとに税金など国や市町村への支払いのキャッシュレス化はますます進んでいくでしょう。
今回は「誤って税金を多く納めていたり、もしくは少なく納めていたことに気がついた場合の対処方法」についてお話しします。計算間違いなどで税金が正しく納められていなかった場合には当然、訂正をすることになります。しかし「多く納めていた場合」と「少なく納めていた場合」とでは訂正の仕方が異なります。まず「多く納めていた場合」は「更正の請求書」という書類に訂正事項を記載して提出します。その際の注意点は、原則として法定申告期限から5年以内におこなわなければならないということです。一方で「少なく納めていた場合」は「修正申告書」を提出します。こちらも法定申告期限から5年以内ですが、悪質な行為が発覚した場合は7年以内まで延長されます。この場合、追加の税金を納めるとともに過少申告加算税(悪質な行為の場合は、過少申告加算税に代えて重加算税)や延滞税などの附帯税を納付する必要があります。なおこの附帯税は損金(いわゆる経費)には算入することができません。
金を売却した場合は原則、総合課税の譲渡所得となります。これは所有期間が「5年以内である短期」と「5年超である長期」とに分けられます。計算方法は「金地金の譲渡益」と「その年の金地金以外の総合課税の譲渡益」を足したものから「譲渡所得の特別控除」50万円を引きます。また「短期」の場合は全額が課税の対象になり「長期」はその2分の1が課税の対象となるという違いもあります。今回のケースは長期なので、110万円から特別控除額の50万円を引いた60万円の2分の1である30万円が譲渡所得の金額となります。
税金は決められた期限までに納める必要があります。例えば法人税は決算日の翌日から2カ月以内に納付しなければなりません。期限までに納付しなかった場合、納期限の翌日から2カ月を経過する日までは「年7.3%」か「延滞税特例基準割合+1%」の低いほうを、納期限から2カ月を経過する日の翌日以後については「年14.6%」か「延滞税特例基準割合+7.3%」のどちらか低い割合で計算した延滞税というものが本来の税金以外にかかってきます。ちなみに延滞税特例基準割合とは、財務大臣が告示する平均貸し付割合に、年1.0%の割合を加算した割合のことです。また延滞税以外にも過少申告加算税・無申告加算税・不納付加算税・重加算税といった多くの加算税もあります。これらの税金は、法人税を計算する上では損金不算入となり経費として認められません。一方で社会保険料や労働保険料についても、納期限までに保険料を納めなかった場合、同様に延滞金を支払わなければなりません。ただしこの延滞金については、法人税を計算する上では損金に算入することができます。同じ罰則的な意味合いの延滞金を支払っても、処理の仕方はまったく異なります。いずれにしても本来は支払う必要のないお金です。税金や社会保険料などは、しっかり資金繰りをして期限までに納めるように心掛けましょう。
昨今、オフィスや小売店など多くの場面で欠かせない存在となっている外国人労働者。そこで今回は「外国人の雇用」に関して、日本人の場合との相違点をお話しします。大きな違いは3つあります。1つ目は行政に届出が必要な書類が格段に多いこと。2つ目は言葉の壁もあるため丁寧に説明したり理解してもらうことが多いこと。3つ目は文化などの違いにより日本人と同じような接し方ではうまくいかないこと。税金や社会保険の取り扱いについては基本的には同じですが、租税条約や社会保障協定によって一部異なる場合もあります。例えば、外国人労働者の家族が国外にいる場合、その家族が外国人労働者本人の配偶者または親族であること、日常の生活費などを家族に送金していること、年間の所得金額が38万円以下であることなどの条件を満たせば税金を計算する上で扶養に入れることはできます。ただ、そのためには親族関係書類などを準備する必要があります。また短期のアルバイトを雇い入れる際、それが中国から来た留学生であれば、アルバイト収入については日中租税協定の届出をすることにより免税となる可能性が高いです。このように日本人を雇用する場合と比べて留意すべき点もありますが、重要な戦力として活躍している 外国人労働者は多いので一度、検討してみてはいかがでしょう。
2020年度の税制改正の概要が昨年末に決まりました。「オープンイノベーション(企業が研究開発を行う際に組織の枠組みを超え、広く知識・技術の結集を図ること)の促進などを促す措置」「連結納税の抜本的な見直し」「全てのひとり親家庭の子どもに対する公平な税制の実現」「NISA(少額投資非課税)制度の見直し」などが行われます。具体的には個人所得課税については、未婚のひとり親に寡婦(夫のいない女性)寡夫(妻のいない男性)控除が適用されます。男性のひとり親と女性のひとり親について不公平を解消する目的で所得制限(500万円以下)を統一したり、子どもがいる寡婦と寡夫の控除額(35万円)も同額となります。NISA制度では20年間、積み立て可能な「つみたてNISA」が5年間延長されるため、2023年までに始めれば20年間の積立期間が確保されます。また法人課税については、一定の要件を満たしたベンチャー企業に対して大企業は1億円以上、中小企業は1000万円以上の出資を行った場合、その25%に相当する額が所得控除できます。この他にも持続的な経済成長の実現に向けた決定事項はたくさんありますが、この度の新型コロナウイルスによる世界規模の景気低迷により、税制に限らず経済活性化の一助となるような新たな策が臨機応変に講じられるかもしれません。
2016年度の税制改正により「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例」が創設されました。いわゆる「相続空き家」を売却したときの特例です。人口の減少が進みつつある日本では、将来的に空き家が増えていく恐れがあります。また近年では全国で自然災害が多発しており、そのような状況下において旧耐震基準(1981年5月31日以前の耐震基準)の下で建築された空き家の増加を抑制することを目的にこの特例が創設されました。具体的には、被相続人(亡くなった方)が1人で住んでいた家屋や土地を相続などにより取得した人が売却したとき、特定の要件を満たせばその利益から3000万円を控除することができます。つまり3000万円までのプラスの財産であれば税金はかからないということです。対象となる家屋や適用要件など、この特例を受けるためには詳細な規定がありますが、大まかにいえば「家屋が旧耐震基準で建築されていること」「相続や遺贈などにより取得した、被相続人が住んでいた家屋などを売却すること」「相続の開始があった日から3年目の12月31日までに売却すること」「売却代金が1億円以下であること」などの要件を満たす必要があります。なお、この特例の適用期間は2023年12月31日までなので、対象となる方は早めに取り組みましょう。
「小学生の子ども1人と夫婦の3人で暮らしています。共働きですが、子どもが大学に進学するまでに上手に貯めていけたらと思っています。できれば税金の負担を軽くしたいのですが、何か良い方法はあるでしょうか」という質問がありました。最初に節税の基本について2つご紹介します。1つ目は「所得控除」と「税額控除」です。所得控除は税金を算出する前の所得を下げる方法です。一方、税額控除は算出された所得税から税金そのものを控除する方法です。そして2つ目は収入の多い人から優先して所得を減らすという方法です。所得税は所得に税率を掛けて算出されますが、日本の課税制度では所得が高ければ高いほど税率は上がります。そのためより節税になる方法としては、夫婦のうち収入の多いほうから先に所得を下げるのが得策です。上記のような点から共働き世帯に効果的な節税方法としては「住宅ローンを夫婦で活用する」「医療費控除を受ける」などが代表的でしょう。住宅ローン控除はそれぞれがローンを活用して税額控除を受けることができます。医療費控除は生計を共にしている家族であれば、その世帯の医療費の合計額について所得の高い人がまとめて所得控除を受けるほうが効果的です。この他にも「親を扶養に入れる」など節税方法は多いので上手に活用して将来設計をしましょう。
人手不足が叫ばれる中、できるだけ働きやすい環境を整えて社員を少しでも長く健康に勤められるようにと、工夫を凝らした福利厚生に力を入れる企業も多くなりました。インターネット関連サービス大手のヤフー株式会社では、社員の健康増進に役立てるために独自の税を導入したそうです。その名も「揚げ物税」。これは社員食堂で提供する揚げ物料理の一部について100円値上げするというものです。一方、魚料理については「お魚還元」として150円値下げしました。例えば、チキン南蛮定食は591円から691円に、サバのみそ煮定食は693円から543円に。
ヤフーの社内調査によれば、社員が昼食で脂質を取りすぎる傾向にあるという実態が判明し、それが多く含まれる揚げ物料理を控え、よりヘルシーな魚料理を食べてもらおうという社員の食生活の改善を狙うことを目的にこの制度を設けました。ヤフーでは以前から「社員の健康は生産性の向上につながる」という「健康経営」に取り組んでおり「社員の健康は企業の繁栄にもつながる」という発想をもっていたそうです。値上げするだけでなく健康に良いメニューをお値打ち提供することにより、社員の体と懐の負担を軽くして元気に長く働くことができる仕組み。このようなユニークな税制度は今後、多くの企業で導入されていくかもしれませんね。
日本に訪れる外国人観光客の数は年々増加の一途をたどっています。そのためホテルの客室数が足りず、一般の住宅(戸建やマンションなど)全部や一部を活用して宿泊サービスを行う「民泊」が急増しています。2018年6月に住宅宿泊事業法が施行されてから民泊は「旅館業法の許可を得る」「国家戦略特別区域法の認定を得る」「住宅宿泊事業法の届出をする」のいずれかの方法で行います。中でも個人の住宅を利用して民泊を行う場合は、住宅宿泊事業法の届出をして行いますが当然、その際に発生する宿泊料などの収入は税務申告が必要です。これは原則として「雑所得」に区分されますが、民泊が事業的規模で行われていることが客観的に明らかであれば「事業所得」として申告することになります。また不動産賃貸業を営んでいる人が、空き物件を一時的に民泊として貸した場合は「不動産所得」に含めて申告しても差し支えありません。いずれにしてもきちんと税務申告をすることは大切です。その際に収入から差し引くことができる経費としては仲介事業者への手数料、管理費、広告宣伝費、通信費、家屋の減価償却費などがあります。水道光熱費や固定資産税など、費用が業務用と生活用の両方に含まれるものについては、例えば宿泊させた日数など合理的な方法によりあん分して計算します。
国税庁から2018年度の査察の概要が発表されました。査察制度は、悪質な脱税者に対して刑事責任を追及し、その者を罰することで他の人々が同じような過ちを犯さぬよう戒め、適正で公平な課税の実現と申告納税制度を維持することを目的としています。今回、発表された査察による告発件数は121件でしたが、中でも消費税の還付制度を悪用した「消費税受還付事案」、故意に申告しない「無申告ほ脱事案」、海外取引を悪用した「国際事案」など重点事案と呼ばれるもので全体の半数近くを占めていました。消費税受還付事案は、2014年の告発件数は5件で約1億円の不正還付額だったものが、今回は16件で約19億円と急激に増加しており、未遂犯についても過去最多の告発件数でした。また無申告ほ脱事案の告発件数は18件、国際事案の告発件数は20件で、これらを含む脱税総額は112億円でした。そして2018年度中に一審判決が言い渡された件数は122件で、その全てに有罪判決が出され7人に実刑判決が下されました。中でも最も重い実刑判決は懲役4年6カ月でした。売り上げの除外や架空経費を計上するなど告発とまではならないものの所得隠しを行えば本来、納めるべき税金の他に重加算税や延滞税などが課されます。それこそ割に合いません。適正な納税による健全な経営が最強ですね。
2019年度の税制改正において個人版事業承継税制が創設されました。この制度は、事業で使用している宅地や建物などの資産に対する贈与税・相続税の全額の納税が猶予されるものです。また後継者の死亡など一定の事由が生じた場合には、猶予されている贈与税・相続税の納税の全部または一部が免除されます。具体的には青色申告に係る事業(不動産貸付業などを除く)を行っていた事業者の後継者が、2019年1月1日から2028年12月31日までに贈与や相続などにより特定事業用資産を取得した場合に適用されます。特定事業用資産とは、先代の事業者が事業に使用していた400平方メートルまでの宅地や床面積が800平方メートルまでの建物、自動車などの資産で、贈与や相続などが発生した年の前年分の事業所得に関する青色申告書の賃貸対照表に計上されていたものです。税金の負担を軽くする事業承継税制はすでにありますが、従来の制度は法人の自社株に対するものであり、個人事業主を優遇する制度ではありませんでした。今回の創設により個人の事業承継が円滑に進むことが期待されます。ただし、この制度を活用するためには年齢制限などの条件や、事前に「個人事業承継計画の提出」「経営承継円滑化法による認定」などが必要となりますので詳細についてはご相談ください。
国税庁は2019年度にAI(人工知能)に関連する予算を初めて計上し、2020年1月から「チャットボット」による税務相談を試験的に導入する予定です。チャットボットとは「おしゃべり」を意味する「チャット」と「ロボット」を組み合わせた造語で、人工知能を活用した自動会話プログラムのことです。身近なところではスマートフォンに搭載されている音声アシスタントや、アマゾンやグーグルのスマートスピーカーなどもそのひとつです。今まで税務署の職員が行っていた対応業務をAIが代行するのです。最近では企業のホームページの下方などに「チャット受付中です。お気軽にお問い合わせください」といったメッセージを見掛けたことはないでしょうか。このような感じで国税庁も税に関する相談を土日、夜間など日時に関係なくホームページ上で対応し、納税者のニーズに沿った相談事務の効率化を図ろうと考えています。最初はサラリーマンや年金受給者の確定申告に関する質問に対応する予定です。例えば「住宅ローン控除に必要な書類は何ですか?」「医療費控除で予防接種は控除の対象になりますか?」などといった簡易な質問に対しチャットボットで回答するようです。画面の向こう側に税務署の職員が待機しているわけではないので一度、試してみるといいかもしれませんね。
2019年2月1日に発効されたEPA(日欧経済連携協定)により関税の削減や撤廃がありました。これに伴い欧州連合(EU)からの豚肉やワイン、チーズなどの輸入が前年同月に比べて大幅に伸びました。関税は歴史的には古代都市国家における手数料に始まり、幾多の変遷を経て今日では「輸入品に課される税」として定義されています。かつては他の税金と同様に国家の財源として重要な位置を占めていましたが、経済活動のグローバル化によって国家の財政規模が巨大になると財源調達としての意義は小さくなり、現在では「国内産業の保護」という機能のほうが重要となっています。それは、関税が課せられるとその分だけコストが増加し、国産品に対して競争力が低下するからです。
例えば、それまでフルボトルサイズの一般的なワインでは最大約94円、スパークリングワインでは一律約137円の関税が課されていましたが今回、これが撤廃されました。チーズも29.8%の関税率がEPA発効直後には27.9%となり、さらに段階的に下げていきます。こうしたことにより価格の低下が見込まれ、消費者の利益になりそうですが 、一方で輸入の拡大で競争が激しくなる国内生産者からは不安の声が出ています。私たちには縁遠いものに思える関税ですが、日々の暮らしに深くかかわっているようですね。
私たちにとって最も身近な法律が民法でしょう。その1000を超える膨大な条文を大きく2つに分けると、財産に関するものと家族に関するものになります。前者は「財産法」、後者は「家族法」などと呼ばれています。そして、2018年7月には高齢化の進展など社会環境の変化に対応するため、約40年ぶりに家族法の中の相続に関する部分が大きく改正されました。具体的には「配偶者居住権の創設」「自筆証書遺言に添付する財産目録の作成がパソコンで可能」「法務局で自筆証書による遺言書が保管可能」 「被相続人の介護や看護で貢献した親族は金銭要求が可能」といった内容が主な改正点となります。そこで今回は「配偶者居住権」について説明します。例えば、夫を亡くした妻がいたとします。夫が亡くなるまで一緒に住んでいた自宅の所有権を、何らかの理由でその妻が相続しなかったとしてもずっと自宅に住むことのできる権利が配偶者居住権です。これによって親族間で相続財産の分割協議でもめていたとしても、妻は自宅に住む権利は認められているため路頭に迷うことはありません。またこの配偶者居住権は相続税にも影響を及ぼすことがあるので事前にしっかりと相続対策を行う必要があるでしょう。なお配偶者居住権については2020年4月1日以後に開始する相続から適用されます。
政府が推進する働き方改革により、全ての企業で残業時間を減らし従業員の有給休暇の取得を促進することとなりました。しかし同時に企業の利益のために、さまざまな方法により今まで以上に労働の効率化を図っていく必要があります。昨今、IT技術の目覚ましい発展によってあらゆる場面で便利になってきました。これは日々の会計業務においても同じことが言えます。例えば、全国を飛び回っている営業マンがいるとします。一般的な場合、事前に経費を仮払いして出張に出掛けるでしょう。そして、それにかかった接待交際費や旅費交通費などは出張から帰った際に、担当部署に領収書の原本を提出して仮払いの精算をしていると思います。ところが2016年の電子帳簿保存法の改正で、スマートフォン専用アプリで撮影したデータも帳簿として認められるようになりました。それにより最近ではスマートフォンで読み取った領収書を自動で会社に転送して経費が精算できるようなシステムまで登場しました。その他に交通系ICカードの利用履歴で交通費の精算ができるようなものもあります。これらを活用することで従来の紙の領収書の保存をする必要がなくなったり、煩わしい経費の精算から解放されるようにもなります。今後は減少する労働力を身近なツールを使って補っていく時代かもしれませんね。
サラリーマンの方でも文具など仕事のために自己負担する費用がある場合、これを考慮して一定の金額を控除する制度があります。この制度を「給与所得控除」といい、その額は収入金額に応じて決められています。しかし、それ以上に費用の支出がある場合には「特定支出控除」を利用することができます。特定支出の範囲は「通勤に必要な費用」「転勤の際にかかる費用」「仕事に関する研修を受けるための費用」「仕事に必要な資格を取得するための費用」「単身赴任などの場合、自宅に帰るための費用」「仕事に関連する書籍や衣服、接待などのための勤務必要経費」となります。最後の勤務必要経費の限度額は65万円です。これらの合計金額が給与所得控除額の半分を超えるときは、確定申告による恩恵を受けることができます。例えば年収500万円の人の場合、給与所得控除額は154万円です。そして特定支出の合計金額が100万円だったとすると、100万円から154万円の2分の1である77万円を引いた23万円が特定支出控除額となります。なお、確定申告の際には特定支出に関する明細書や給与支払者の証明書などを添付する必要があります。貴重な時間を割いて仕事に必要な資格を取得するような人にとっては、それに費やす金額もかなりの負担となるため、この制度を有効に活用できるといいですね。
日本に入国する外国人旅行者が増えれば当然、その分だけ出国する旅行者の数も増えます。そこで世界の多くの国が導入している「出国税」が2019年1月7日から日本でも導入されました。正式には「国際観光旅客税」といいます。これは国籍に関係なく1人につき一律1000円の税金が、原則として航空券やツアー代金などに上乗せされるものです。出国時に別途税金を納めるというわけではないため気が付かない人も多いでしょう。ただし、日本の空港で乗り継ぎする場合など日本に入国して24時間以内に出国する人や2歳未満の子どもなどは対象外となります。政府はこの出国税によって年間約400億円の税収を見込んでいるようですが、その使い道は「ストレスフリーで快適な旅行ができる環境の整備」「日本の多様な魅力に関する情報の入手の容易化」「地域固有の文化、自然等を活用した観光資源の整備等による地域での体験滞在の満足度向上」となっています。ところで世界に目を向けてみると、すでにアメリカ、オーストラリア、イギリス、タイ、カンボジア、韓国など多くの国で導入されており、中でもオーストラリアでは日本円で約5000円とかなり高額です。いずれにしても導入されたからには観光先進国の実現に向けてきちんとした取り組みを実施し、有意義に活用してもらいたいですね。
2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックを念頭に、社会全体がさまざまな分野でキャッシュレス化に向かっています。これは訪日外国人のニーズに応えるためもありますが、世界の流れに取り残されないようにという焦りでもあるのでしょう。そして、納税にもキャッシュレス化の波は押し寄せています。納税方法の中で一般的に知られているのは金融機関や税務署の窓口で納めるやり方ですが、税金の種類によっては指定した銀行口座より自動振替で納める方法もあります。これは「振替納税」といいます。
また税金が30万円以下であれば、専用のバーコード付納付書を使って手数料不要で最寄りのコンビニで納めることもできます。この他にも事前の届出等は必要となりますが「ペイジー」を利用して金融機関のATMやインターネットバンキングで支払うことも可能です。さらに国税庁の専用サイトを介してクレジットカードも利用できます。この場合1円~10000円までは82円(税込み)、それ以降は10000円を超えるごとに82円を加算した決済手数料が別途かかります。とはいえ、各カード会社によるポイント還元などの特典もあるため手数料を支払ってでも利用する価値はあるかもしれませんね。このように一昔前に比べて今の時代に合った納税方法の選択肢も随分と増えてきました。
一攫千金は夢があって魅力ですが、その後の適正な処理も大切です。競馬や競輪などの公営ギャンブルで得た一定以上の所得は「一時所得」や「雑所得」として申告する義務があります。例えば競馬で馬券を自動的に購入するソフトウェアを利用して独自の条件設定などでその年のほぼ全てのレースに挑戦し、年間を通しての収支で利益を得られるようにした場合は雑所得に該当します。その際の外れ馬券の購入費用は必要経費となります。一方、一般の競馬愛好家については一時所得に該当し、外れ馬券の購入費用は必要経費として控除することはできません。このように特殊な場合を除いては、年間50万円までの競馬の払戻金には税金はかからず申告する必要はありません。税金がかかるとしてもその対象は50万円を超えた金額の半分です。国の行政機関である会計検査院の発表によると、2015年に公営ギャンブルで1回の払戻金が1050万円以上だったケースは約530口で127億円の払戻金があったそうです。このうち一時所得や雑所得で適正に申告されたのは50数件、約20億円にとどまったとか。現在、窓口での購入や払戻金の受け取りに本人確認は不要で、主催者側が税務当局に通知する仕組みもありません。そのため適正な申告を促す取り組みが課題となっています。ちなみに宝くじの当選金は非課税です。
会社を経営する上で避けては通れないのが税金の問題です。納税は義務とはいえ、できる範囲の適切な節税は心掛けたいものですね。一言に節税といっても「支出を伴わないもの・支出を伴うもの」「普段から取り組めるもの・決算間際でも間に合うもの」など、いくつかに分類することができます。多くの場合、決算の直前に慌てて行うイメージもありますが、普段から計画的に取り組むことが望ましいでしょう。例えば、会社の利益と役員報酬のバランスだったり、省エネ設備の導入など将来に向けて行う投資により特別償却や税額控除などの優遇措置も活用することができます。これらは普段から計画的に取り組めるものです。一方で決算間際でも間に合うものとしては、当期に発生した費用ではあるものの支払いが次の期に確定している通信費や広告宣伝費、社会保険料、給与などの未払費用や未払金を当期の経費として計上する方法です。これは支出を伴わない節税なのできちんと計上することが大切です。また支出は伴いますが、決算間際にできるものとしては中小企業倒産防止共済や法人保険への加入などがあります。このように節税には色々な手段や方法がありますが、この先の会社の業績に大きな影響を及ぼすため、あらかじめ自社に合った最適なプランを整理しておきたいですね。
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