税金は国会等で決められます。増税、減税その季節になると色々報道機関等で話題になります。税金が私達の生活や経済活動の中でどのように影響が有るのか、わかりやすくお伝えしたいと思います。
国税庁はストックオプションに対するQ&Aを公開しました。その中で信託型ストックオプションについて「権利行使時に給与として課税する」ということを示しました。信託型ストックオプションとは、従業員が自社株式を購入する価格を会社側が設定した上で信託し、信託会社が従業員に配布する仕組みであり、スタートアップ企業(新興企業)を中心に導入されています。これにより従業員が得た利益は、比較的税率が低い譲渡所得(20%)にあたるとの認識で利用する会社も増えていました。しかし今回の国税庁での説明では、給与所得(最高税率約55%)にあたるとのこと。国税庁はこれについて従来の取り扱いを変更したものではないとして、会社側が与えた権利を従業員が行使して株式を取得した時点で実質的な給与にみなされ、すでに行使済みの従業員に対しても会社側がさかのぼって所得税の源泉徴収の必要があるとしました。今回の説明により多くの企業でさまざまな対応が求められそうです。
所得税法に規定する「非永住者以外の居住者」は、その年の12月31日において5000万円を超える国外財産を有する場合、その財産の種類、数量、価額等を記載した国外財産調書を所轄税務署長に提出しなければなりません。国税庁の発表によると2021年分の提出状況は、総提出件数が12109件、総財産額は5兆6364億円で8年連続で増加しており、集計が始まった2013年以降いずれも最高となりました。財産の種類としては有価証券が最も多い3兆5695億円、次いで預貯金が7591億円、建物が4474億円の順となっています。この調書は自主的に自己の情報を記載し提出するものなので、特例措置がもうけられています。期限内に提出した場合、所得税の申告漏れが生じたときでも加算税が5%軽減されます。しかし期限内に提出がない場合、または提出した調書に記載すべき財産の記載がない場合は、その財産に係る所得税の申告漏れが生じたときには、加算税が5%加重されるなどの措置があります。
今回は2023年度の税制改正のポイントについてお話しします。個人所得課税については、家計の資産を貯蓄から投資へと資産所得倍増につなげるべく、NISA制度の拡充と恒久化措置が講じられました。それにより「つみたて投資枠」については年間上限枠を120万円に拡充し、新たに設けられた「成長投資枠」の年間投資上限額を240万円に拡充するとともに「つみたて投資枠」との併用が可能となりました。資産課税については、相続時精算課税制度における基礎控除(年110万円)の創設により、この制度の選択後も毎年110万円以下の贈与については贈与税の申告が不要。また資産移転の時期に対する中立性を高める観点より、暦年課税における相続前贈与の期間を3年から7年に延長したほか、延長した期間に受けた贈与のうち100万円については相続財産に加算しない見直しが行われました。この他、法人課税については研究開発税制の見直し、先導的人材投資に関する税制の創設なども行われました。
2023年10月1日よりインボイス制度が開始されます。これにより適確請求書発行事業者(登録事業者)のみが適確請求書(インボイス)を交付することができます。制度の開始後は、これまでの請求書等の保存に代えて適格請求書等の保存が仕入税額控除の要件となります。登録事業者でない免税事業者からの課税仕入れについては、仕入税額控除を行うことができなくなります。しかし2023年10月から2029年9月までは、免税事業者からの課税仕入れについて、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる経過措置がもうけられています。具体的には、2023年10月1日から2026年9月30日までは仕入税額控除の80%、2026年10月1日から2029年9月30日までは50%を仕入税額として控除できます。ただしこの適用にあたっては、免税事業者等から受領する区分記載請求書等と同様の事項が記載された書類の保存と、その内容を記載した帳簿の保存が必要となります。
「103万円の壁」や「130万円の壁」という言葉をみききした方も多いと思います。最近では「106万円の壁」という言葉もありますが、今回は前者の2つの金額の壁についてお話します。103万円は税法上の扶養の壁、130万円は社会保険上の扶養の壁です。給与による年収が103万円以下であれば所得税はかかりません。また103万円以下でアルバイトをしている子どもや配偶者を扶養に入れることができます。配偶者の場合は、103万円超であっても201.6万円未満であれば配偶者特別控除という制度で38万円から1万円までの控除を受けることが可能です。一方、130万円の社会保険上の壁は、130万円までの収入であれば、扶養者の社会保険上の扶養に入ることができます。よくあるケースですが、配偶者が扶養の範囲内で働きたい場合は「所得税がかからない程度なのか、社会保険の扶養範囲内までなのか」など、いろいろな金額の壁を考えながらワークライフバランスと家計にベストな方法を検討する必要があるでしょう。
「今期は利益が出そうなので、決算直前でもできる節税対策はないでしょうか」という相談を受けました。このような場合の節税対策のひとつに「短期前払費用の特例」という制度があります。通常では費用の支払をしても、サービスの提供を受けていない来期分の「前払費用」については、当期の経費に算入することができません。しかし一定の条件を満たせば当期の経費とすることができます。その条件とは「契約によって継続的にサービス提供を受けるために支出したものである」「支払日から1年以内にサービス提供をうけるものである」「支払った金額を継続してその事業年度の経費にしている」です。例えば、決算月などに1年分の事業所家賃を前払いする契約に変更し、その一年分の家賃を支払えば経費として参入することができます。なお支払利息のように、収益と対応させる必要があるものについては認められません。また期間限定の広告代など継続的でない場合も特例が適用されないことがあるので注意が必要です。
国税は、申告した税額に基づき納税者自身が期限までに納付する必要があります。これまでは金融機関の窓口で納付したり、指定した口座からの振替えによる納付がほとんどでした。ところが最近ではクレジットカードやインターネットバンキングなどを利用した納付、eーTaxによるダイレクト納付、コンビニでのバーコード納付などといったいろいろな方法があります。
これに加えて2022年12月1日からスマートフォンのアプリによる「Pay払い」が可能になりました。これまでにもクレジットカードを使った納付はありましたが、利用者が金額に応じた手数料を負担する必要がありました。しかしPay払いでは手数料は発生せず、利用者に負担が生じません。現在、利用可能なPay払いは6種類あります。「アカウント残高を利用した支払方法のみ利用可能」で、一度の納付での上限額は30万円です。キャッシュレス法をもとに税金など国や市町村への支払いのキャッシュレス化はますます進んでいくでしょう。
今回は「誤って税金を多く納めていたり、もしくは少なく納めていたことに気がついた場合の対処方法」についてお話しします。計算間違いなどで税金が正しく納められていなかった場合には当然、訂正をすることになります。しかし「多く納めていた場合」と「少なく納めていた場合」とでは訂正の仕方が異なります。まず「多く納めていた場合」は「更正の請求書」という書類に訂正事項を記載して提出します。その際の注意点は、原則として法定申告期限から5年以内におこなわなければならないということです。一方で「少なく納めていた場合」は「修正申告書」を提出します。こちらも法定申告期限から5年以内ですが、悪質な行為が発覚した場合は7年以内まで延長されます。この場合、追加の税金を納めるとともに過少申告加算税(悪質な行為の場合は、過少申告加算税に代えて重加算税)や延滞税などの附帯税を納付する必要があります。なおこの附帯税は損金(いわゆる経費)には算入することができません。
金を売却した場合は原則、総合課税の譲渡所得となります。これは所有期間が「5年以内である短期」と「5年超である長期」とに分けられます。計算方法は「金地金の譲渡益」と「その年の金地金以外の総合課税の譲渡益」を足したものから「譲渡所得の特別控除」50万円を引きます。また「短期」の場合は全額が課税の対象になり「長期」はその2分の1が課税の対象となるという違いもあります。今回のケースは長期なので、110万円から特別控除額の50万円を引いた60万円の2分の1である30万円が譲渡所得の金額となります。
税金は決められた期限までに納める必要があります。例えば法人税は決算日の翌日から2カ月以内に納付しなければなりません。期限までに納付しなかった場合、納期限の翌日から2カ月を経過する日までは「年7.3%」か「延滞税特例基準割合+1%」の低いほうを、納期限から2カ月を経過する日の翌日以後については「年14.6%」か「延滞税特例基準割合+7.3%」のどちらか低い割合で計算した延滞税というものが本来の税金以外にかかってきます。ちなみに延滞税特例基準割合とは、財務大臣が告示する平均貸し付割合に、年1.0%の割合を加算した割合のことです。また延滞税以外にも過少申告加算税・無申告加算税・不納付加算税・重加算税といった多くの加算税もあります。これらの税金は、法人税を計算する上では損金不算入となり経費として認められません。一方で社会保険料や労働保険料についても、納期限までに保険料を納めなかった場合、同様に延滞金を支払わなければなりません。ただしこの延滞金については、法人税を計算する上では損金に算入することができます。同じ罰則的な意味合いの延滞金を支払っても、処理の仕方はまったく異なります。いずれにしても本来は支払う必要のないお金です。税金や社会保険料などは、しっかり資金繰りをして期限までに納めるように心掛けましょう。
昨今、オフィスや小売店など多くの場面で欠かせない存在となっている外国人労働者。そこで今回は「外国人の雇用」に関して、日本人の場合との相違点をお話しします。大きな違いは3つあります。1つ目は行政に届出が必要な書類が格段に多いこと。2つ目は言葉の壁もあるため丁寧に説明したり理解してもらうことが多いこと。3つ目は文化などの違いにより日本人と同じような接し方ではうまくいかないこと。税金や社会保険の取り扱いについては基本的には同じですが、租税条約や社会保障協定によって一部異なる場合もあります。例えば、外国人労働者の家族が国外にいる場合、その家族が外国人労働者本人の配偶者または親族であること、日常の生活費などを家族に送金していること、年間の所得金額が38万円以下であることなどの条件を満たせば税金を計算する上で扶養に入れることはできます。ただ、そのためには親族関係書類などを準備する必要があります。また短期のアルバイトを雇い入れる際、それが中国から来た留学生であれば、アルバイト収入については日中租税協定の届出をすることにより免税となる可能性が高いです。このように日本人を雇用する場合と比べて留意すべき点もありますが、重要な戦力として活躍している 外国人労働者は多いので一度、検討してみてはいかがでしょう。
2020年度の税制改正の概要が昨年末に決まりました。「オープンイノベーション(企業が研究開発を行う際に組織の枠組みを超え、広く知識・技術の結集を図ること)の促進などを促す措置」「連結納税の抜本的な見直し」「全てのひとり親家庭の子どもに対する公平な税制の実現」「NISA(少額投資非課税)制度の見直し」などが行われます。具体的には個人所得課税については、未婚のひとり親に寡婦(夫のいない女性)寡夫(妻のいない男性)控除が適用されます。男性のひとり親と女性のひとり親について不公平を解消する目的で所得制限(500万円以下)を統一したり、子どもがいる寡婦と寡夫の控除額(35万円)も同額となります。NISA制度では20年間、積み立て可能な「つみたてNISA」が5年間延長されるため、2023年までに始めれば20年間の積立期間が確保されます。また法人課税については、一定の要件を満たしたベンチャー企業に対して大企業は1億円以上、中小企業は1000万円以上の出資を行った場合、その25%に相当する額が所得控除できます。この他にも持続的な経済成長の実現に向けた決定事項はたくさんありますが、この度の新型コロナウイルスによる世界規模の景気低迷により、税制に限らず経済活性化の一助となるような新たな策が臨機応変に講じられるかもしれません。
2016年度の税制改正により「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例」が創設されました。いわゆる「相続空き家」を売却したときの特例です。人口の減少が進みつつある日本では、将来的に空き家が増えていく恐れがあります。また近年では全国で自然災害が多発しており、そのような状況下において旧耐震基準(1981年5月31日以前の耐震基準)の下で建築された空き家の増加を抑制することを目的にこの特例が創設されました。具体的には、被相続人(亡くなった方)が1人で住んでいた家屋や土地を相続などにより取得した人が売却したとき、特定の要件を満たせばその利益から3000万円を控除することができます。つまり3000万円までのプラスの財産であれば税金はかからないということです。対象となる家屋や適用要件など、この特例を受けるためには詳細な規定がありますが、大まかにいえば「家屋が旧耐震基準で建築されていること」「相続や遺贈などにより取得した、被相続人が住んでいた家屋などを売却すること」「相続の開始があった日から3年目の12月31日までに売却すること」「売却代金が1億円以下であること」などの要件を満たす必要があります。なお、この特例の適用期間は2023年12月31日までなので、対象となる方は早めに取り組みましょう。
「小学生の子ども1人と夫婦の3人で暮らしています。共働きですが、子どもが大学に進学するまでに上手に貯めていけたらと思っています。できれば税金の負担を軽くしたいのですが、何か良い方法はあるでしょうか」という質問がありました。最初に節税の基本について2つご紹介します。1つ目は「所得控除」と「税額控除」です。所得控除は税金を算出する前の所得を下げる方法です。一方、税額控除は算出された所得税から税金そのものを控除する方法です。そして2つ目は収入の多い人から優先して所得を減らすという方法です。所得税は所得に税率を掛けて算出されますが、日本の課税制度では所得が高ければ高いほど税率は上がります。そのためより節税になる方法としては、夫婦のうち収入の多いほうから先に所得を下げるのが得策です。上記のような点から共働き世帯に効果的な節税方法としては「住宅ローンを夫婦で活用する」「医療費控除を受ける」などが代表的でしょう。住宅ローン控除はそれぞれがローンを活用して税額控除を受けることができます。医療費控除は生計を共にしている家族であれば、その世帯の医療費の合計額について所得の高い人がまとめて所得控除を受けるほうが効果的です。この他にも「親を扶養に入れる」など節税方法は多いので上手に活用して将来設計をしましょう。
人手不足が叫ばれる中、できるだけ働きやすい環境を整えて社員を少しでも長く健康に勤められるようにと、工夫を凝らした福利厚生に力を入れる企業も多くなりました。インターネット関連サービス大手のヤフー株式会社では、社員の健康増進に役立てるために独自の税を導入したそうです。その名も「揚げ物税」。これは社員食堂で提供する揚げ物料理の一部について100円値上げするというものです。一方、魚料理については「お魚還元」として150円値下げしました。例えば、チキン南蛮定食は591円から691円に、サバのみそ煮定食は693円から543円に。
ヤフーの社内調査によれば、社員が昼食で脂質を取りすぎる傾向にあるという実態が判明し、それが多く含まれる揚げ物料理を控え、よりヘルシーな魚料理を食べてもらおうという社員の食生活の改善を狙うことを目的にこの制度を設けました。ヤフーでは以前から「社員の健康は生産性の向上につながる」という「健康経営」に取り組んでおり「社員の健康は企業の繁栄にもつながる」という発想をもっていたそうです。値上げするだけでなく健康に良いメニューをお値打ち提供することにより、社員の体と懐の負担を軽くして元気に長く働くことができる仕組み。このようなユニークな税制度は今後、多くの企業で導入されていくかもしれませんね。
日本に訪れる外国人観光客の数は年々増加の一途をたどっています。そのためホテルの客室数が足りず、一般の住宅(戸建やマンションなど)全部や一部を活用して宿泊サービスを行う「民泊」が急増しています。2018年6月に住宅宿泊事業法が施行されてから民泊は「旅館業法の許可を得る」「国家戦略特別区域法の認定を得る」「住宅宿泊事業法の届出をする」のいずれかの方法で行います。中でも個人の住宅を利用して民泊を行う場合は、住宅宿泊事業法の届出をして行いますが当然、その際に発生する宿泊料などの収入は税務申告が必要です。これは原則として「雑所得」に区分されますが、民泊が事業的規模で行われていることが客観的に明らかであれば「事業所得」として申告することになります。また不動産賃貸業を営んでいる人が、空き物件を一時的に民泊として貸した場合は「不動産所得」に含めて申告しても差し支えありません。いずれにしてもきちんと税務申告をすることは大切です。その際に収入から差し引くことができる経費としては仲介事業者への手数料、管理費、広告宣伝費、通信費、家屋の減価償却費などがあります。水道光熱費や固定資産税など、費用が業務用と生活用の両方に含まれるものについては、例えば宿泊させた日数など合理的な方法によりあん分して計算します。
国税庁から2018年度の査察の概要が発表されました。査察制度は、悪質な脱税者に対して刑事責任を追及し、その者を罰することで他の人々が同じような過ちを犯さぬよう戒め、適正で公平な課税の実現と申告納税制度を維持することを目的としています。今回、発表された査察による告発件数は121件でしたが、中でも消費税の還付制度を悪用した「消費税受還付事案」、故意に申告しない「無申告ほ脱事案」、海外取引を悪用した「国際事案」など重点事案と呼ばれるもので全体の半数近くを占めていました。消費税受還付事案は、2014年の告発件数は5件で約1億円の不正還付額だったものが、今回は16件で約19億円と急激に増加しており、未遂犯についても過去最多の告発件数でした。また無申告ほ脱事案の告発件数は18件、国際事案の告発件数は20件で、これらを含む脱税総額は112億円でした。そして2018年度中に一審判決が言い渡された件数は122件で、その全てに有罪判決が出され7人に実刑判決が下されました。中でも最も重い実刑判決は懲役4年6カ月でした。売り上げの除外や架空経費を計上するなど告発とまではならないものの所得隠しを行えば本来、納めるべき税金の他に重加算税や延滞税などが課されます。それこそ割に合いません。適正な納税による健全な経営が最強ですね。
2019年度の税制改正において個人版事業承継税制が創設されました。この制度は、事業で使用している宅地や建物などの資産に対する贈与税・相続税の全額の納税が猶予されるものです。また後継者の死亡など一定の事由が生じた場合には、猶予されている贈与税・相続税の納税の全部または一部が免除されます。具体的には青色申告に係る事業(不動産貸付業などを除く)を行っていた事業者の後継者が、2019年1月1日から2028年12月31日までに贈与や相続などにより特定事業用資産を取得した場合に適用されます。特定事業用資産とは、先代の事業者が事業に使用していた400平方メートルまでの宅地や床面積が800平方メートルまでの建物、自動車などの資産で、贈与や相続などが発生した年の前年分の事業所得に関する青色申告書の賃貸対照表に計上されていたものです。税金の負担を軽くする事業承継税制はすでにありますが、従来の制度は法人の自社株に対するものであり、個人事業主を優遇する制度ではありませんでした。今回の創設により個人の事業承継が円滑に進むことが期待されます。ただし、この制度を活用するためには年齢制限などの条件や、事前に「個人事業承継計画の提出」「経営承継円滑化法による認定」などが必要となりますので詳細についてはご相談ください。
国税庁は2019年度にAI(人工知能)に関連する予算を初めて計上し、2020年1月から「チャットボット」による税務相談を試験的に導入する予定です。チャットボットとは「おしゃべり」を意味する「チャット」と「ロボット」を組み合わせた造語で、人工知能を活用した自動会話プログラムのことです。身近なところではスマートフォンに搭載されている音声アシスタントや、アマゾンやグーグルのスマートスピーカーなどもそのひとつです。今まで税務署の職員が行っていた対応業務をAIが代行するのです。最近では企業のホームページの下方などに「チャット受付中です。お気軽にお問い合わせください」といったメッセージを見掛けたことはないでしょうか。このような感じで国税庁も税に関する相談を土日、夜間など日時に関係なくホームページ上で対応し、納税者のニーズに沿った相談事務の効率化を図ろうと考えています。最初はサラリーマンや年金受給者の確定申告に関する質問に対応する予定です。例えば「住宅ローン控除に必要な書類は何ですか?」「医療費控除で予防接種は控除の対象になりますか?」などといった簡易な質問に対しチャットボットで回答するようです。画面の向こう側に税務署の職員が待機しているわけではないので一度、試してみるといいかもしれませんね。
2019年2月1日に発効されたEPA(日欧経済連携協定)により関税の削減や撤廃がありました。これに伴い欧州連合(EU)からの豚肉やワイン、チーズなどの輸入が前年同月に比べて大幅に伸びました。関税は歴史的には古代都市国家における手数料に始まり、幾多の変遷を経て今日では「輸入品に課される税」として定義されています。かつては他の税金と同様に国家の財源として重要な位置を占めていましたが、経済活動のグローバル化によって国家の財政規模が巨大になると財源調達としての意義は小さくなり、現在では「国内産業の保護」という機能のほうが重要となっています。それは、関税が課せられるとその分だけコストが増加し、国産品に対して競争力が低下するからです。
例えば、それまでフルボトルサイズの一般的なワインでは最大約94円、スパークリングワインでは一律約137円の関税が課されていましたが今回、これが撤廃されました。チーズも29.8%の関税率がEPA発効直後には27.9%となり、さらに段階的に下げていきます。こうしたことにより価格の低下が見込まれ、消費者の利益になりそうですが 、一方で輸入の拡大で競争が激しくなる国内生産者からは不安の声が出ています。私たちには縁遠いものに思える関税ですが、日々の暮らしに深くかかわっているようですね。
私たちにとって最も身近な法律が民法でしょう。その1000を超える膨大な条文を大きく2つに分けると、財産に関するものと家族に関するものになります。前者は「財産法」、後者は「家族法」などと呼ばれています。そして、2018年7月には高齢化の進展など社会環境の変化に対応するため、約40年ぶりに家族法の中の相続に関する部分が大きく改正されました。具体的には「配偶者居住権の創設」「自筆証書遺言に添付する財産目録の作成がパソコンで可能」「法務局で自筆証書による遺言書が保管可能」 「被相続人の介護や看護で貢献した親族は金銭要求が可能」といった内容が主な改正点となります。そこで今回は「配偶者居住権」について説明します。例えば、夫を亡くした妻がいたとします。夫が亡くなるまで一緒に住んでいた自宅の所有権を、何らかの理由でその妻が相続しなかったとしてもずっと自宅に住むことのできる権利が配偶者居住権です。これによって親族間で相続財産の分割協議でもめていたとしても、妻は自宅に住む権利は認められているため路頭に迷うことはありません。またこの配偶者居住権は相続税にも影響を及ぼすことがあるので事前にしっかりと相続対策を行う必要があるでしょう。なお配偶者居住権については2020年4月1日以後に開始する相続から適用されます。
東京税理士会所属
お気軽にお問合せください。
下村典正税理士事務所(下村税務会計事務所)
TEL:03-6807-6933
n.shimo@tkcnf.or.jp