社労士が答える職場のQ&A

【「懲戒処分」について教えてください】《平成30年7月掲載》

Q:従業員100名ほどの介護関連企業で、今春から人事を担当しています。最近、正社員に加えてパート従業員の人数も増えており、人事関連の制度や運用についても実態に即して見直しをするよう命じられました。そこで改めて就業規則を見返したところ、私は懲戒処分について知識がないことが分かりました。従業員への懲戒処分について、基本的なことを教えてください。


A:一定の秩序を維持するために、会社は従業員に対して非行や秩序を乱す行為について改善命令や懲戒処分を行うことができるとされています。しかし、どのような行為が処分の対象になるかを就業規則にあらかじめ定めておく必要があります。基本的には「処分の根拠があり、合理的であること」「その行為に対する処分が重すぎないこと」「特定の従業員だけを対象としていないこと」「手続きが適正であること」などが求められます。懲戒処分の種類は軽いものから、1.戒告・譴責(けんせき)2.減給 3.出勤停止 4.降格5.諭旨解雇 6.懲戒解雇 に分けられます。従業員に反省と行動の改善を促す懲戒処分ですが、ルールに反した処分を行えば労使トラブルに発展しかねません。常に明瞭で公平な運用を心掛けましょう。 

【「キャリアアップ助成金」について教えてください】《平成30年6月掲載》

Q:IT関連の会社を起業し2年目となる経営者です。売り上げが順調に伸びており、社員やアルバイトの人数も増える中、人事面の体制整備が課題となってきました。経営者仲間から「キャリアアップ助成金を活用するといいよ」という声をよく聞くのですが、具体的にはどのような制度なのでしょうか。

A:「キャリアアップ助成金」とは、労働者の意欲・能力を向上させ、事業の生産性を高め、優秀な人材を確保することを目的として、有期契約労働者・短時間労働者・といった非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップなどを促進するため、正社員化や処遇改善の取り組みを実施した事業主を国が助成する制度です。助成内容は「正社員化」「賃金規定等改定」「健康診断制度」「賃金規定等共通化」「諸手当制度共通化」「選択的適用拡大導入時処遇改善」「短時間労働者労働時間延長」の7つのコースとなっています。助成を受ける条件の詳細は各コースで異なりますが、共通条件として「雇用保険適用事業所であること」「雇用保険適用事業所ごとにキャリアアップ管理者を置いていること「キャリアアップ計画を作成・提出して労働局の認定を受けること」が必要です。

【「みなし残業代」と「みなし労働時間制」の違いは?】《平成30年5月掲載》

Q:事務機器メーカーに入社して3年目の営業担当です。最近、裁量労働制が話題になっていますが、自分はどのような制度で働いているかを確かめてみたところ私の場合は「みなし労働時間制」というのが適用されていました。求人広告などでは「みなし残業代」というのも見かけますが、同じものなのでしょうか?

A:みなし残業代は、定額残業代または固定残業代と呼ばれるもので法的な制度ではありません。また決まった残業代を払えばどれだけ働かせてもよいというものではなく、対象となる時間を明確に示し、これを超えた分については超過勤務手当を支給しなければならないため、実際の労働時間をきちんと把握することが運用に際しての必須条件です。

一方、みなし労働時間制は労働基準法に明記されている制度で、実際の労働時間ではなく所定労働時間または業務に通常必要とされる時間を働いたものとみなす制度です。営業職のように社外で働く職種や労働時間を働く者の裁量に委ねる必要のある職種に限って認められており「事業場外労働制」「専門業務型裁量労働制」「企画業務型裁量労働制」があります。なお、みなし労働時間制では休日や深夜には割増賃金が発生します。

【内定者が留年した場合について教えてください】《平成30年4月掲載》

Q:製造業で人事を担当しています。4月に入社予定だった大学生の内定者が単位不足で卒業できず、留年することになりました。開発部門の有望な戦力として時期をずらしても入社してほしいと思っており、本人も入社を希望しています。10月に卒業できるそうで、それまで学業と並行して働いてもらおうと考えています。その場合、正社員として雇用してもいいのでしょうか。

A:会社と本人の間で合意すれば、正社員として雇用することに問題はありません。しかし、いくつか確認すべき点があります。まず、大学側が在学中の学生について正社員での就労を認めるかどうか。また学業を続けながら正社員として勤務することが可能かどうか。さらに本人の入社意思が変わることも考えられますし、10月に卒業見込みとはいうものの現時点で確証はなく、卒業がさらにずれ込む可能性も否定できません。会社側の採用環境が大きく変わった場合でも、正社員であれば解雇は難しくなります。最後に、雇用保険において学生は労働者とは認められず、卒業見込み証明書があってはじめて加入できます。こうした経緯を踏まえて本人ともう一度、相談してみてはいかがでしょうか。

【副業を解禁する際の注意点を教えてください】《平成30年3月掲載》

Q:IT企業で人事を担当しています。昨今の流れに乗って、当社でも社員の副業を認めるよう就業規則を改訂しました。社長は社員の副業を歓迎する意向で、すでに何人かの社員から副業を持つ前提での相談を受けています。その中でも雇用保険や社会保険についての相談が多いのですが、自分もこのようなケースは対応したことがなく、うまくアドバイスできません。当社の実務面も含め、社員が副業をする際の注意点を教えてください。

A:副業の形態は正社員やパート・アルバイト、派遣社員など多岐にわたり、状況に応じた対応が必要です。雇用保険は主たる賃金を得る事業主のもとでのみ加入することになります。また労災保険は勤務時間等に関係なく、副業先でも必用があれば利用できます。なお副業先での勤務時間が社会保険の加入要件を満たす状況となれば、貴社の勤務時間と合算すると、かなりの長時間労働が生じていることになります。副業の申請を認めた場合でも、貴社には社員が健康に働くための配慮義務が求められます。そのため長時間労働を防ぐ許可条件を設けることをおすすめします。社員が副業を持つ際は本人の状況を聞き、専門家に相談しながら進めましょう。

【「競業避止義務」について教えてください】《平成30年2月掲載》

Q:ソフトウェア開発企業で人事を担当しています。設立から数年、少人数で仲良くやっているのですが、この度、残念ながら営業担当の社員が退職することになりました。退職の手続きを進めるにあたり、社長から「競業避止の誓約書を取っておいて」と言われました。しかし、退職以降もずっと同業他社で働かないように誓約させるのは無理があるように思います。退職予定の社員にも難色を示されました。どうすればよいでしょうか。

A:競業避止義務とは、在職中にその会社と競業する業務を行ってはならないという義務で、労働契約における信義誠実の原則に基づくものです。よって、本来は退職後には生じない義務ですが、退職者が会社独自のノウハウや機密事項、顧客情報を競合他社に持ち込むことは会社にとって大きなリスクです。その反面、退職者の転職や再就職に不自由を科すことは、職業選択の自由を不当に制限することにもなりかねません。退職後に競業避止義務を負ってもらう場合は、その必要性や合理的な理由、避止の対象となる業務の範囲、制限の対象とする時期や地域などを具体的に明示し、本人の理解と合意を得た上で誓約書を取り交わすのがよいでしょう。

【タイムカードの不正打刻への対処策について】《平成30年1月掲載》

Q:保険代理店の営業所で経理事務を担当しています。当社はタイムカードで出退勤を管理しています。先日、ある社員が定時にタイムカードを押さずに会社を出て、私用を済ませた2時間後に会社に戻ってきて退勤の打刻をするのを見てしまいました。会社にはまだ報告していません。どうすればよいでしょうか。

A:出退勤の管理をタイムカードで行う場合、打刻記録は労務管理上の客観的記録となり、会社にとって大変重要な基本データです。単なる打刻忘れならば不正ではありませんが、間違った退勤時刻がタイムカードに残れば、不良なデータだけが保存されることになります。また、もし本人が故意で行ったのであれば不正行為であることは明らかです。いずれにせよ現認した事実を報告しなければなりません。その後の処置については、上司が本人に確認の上で注意をすることになるか、あるいは本社の人事部が面談を含めた調査をすることになるでしょう。営業所の勤務者のうち、事務所での勤務時間が長い事務職はこうした場面に遭遇する可能性が高くなります。タイムカードの記録が勤怠管理に重要なことを所内に周知して、打刻忘れを減らす活動をしてみてはいかがでしょうか。

【「改正職業安定法」の注意すべき点とは?】《平成29年12月掲載》

Q:流通業で人事を担当しています。来年度に向けて、店舗の店長候補やバイヤー、本社の管理部門など、幅広い職種で新卒と中途の採用を予定しています。そんな中、来年早々に職業安定法が改正になり、求人情報を出す際のルールが厳しくなると聞きました。具体的にどのような点に注意すればよいのでしょうか。

A:改正職業安定法のうち、労働者を募集する企業が注意すべき点は平成30年1月1日施行の部分です。具体的には求人情報と異なる条件を適用する場合や変更した場合、労働条件を明示しなければならない時点を「変更等以降可能な限り速やかに(労働契約締結の前に)明示する」ことと定められました。また固定残業代の詳しい内容、裁量労働制を採用する際のみなし労働時間、試用期間に関する事項、募集者の氏名または名称、派遣労働者として雇用する場合等などが、新たに労働条件通知書で書面明示しなければならない事項として追加されました。労働条件の明示が正しくないことは労働基準法違反のため企業側は指摘を受ける可能性があります。さらに新規学卒採用には、内定時に労働条件の書面交付をすべきという指針も出ているので詳細は専門家にご相談ください。

【内定辞退に関する電話連絡対策を教えてください】《平成29年11月掲載》

Q:広告代理店で人事を担当しています。売り手市場を受け、今年は内定辞退者が多いようです。基本的には電話で内定辞退を知らせてくる学生が多いのですが先日、初めて「内定辞退を撤回したい」という学生がいました。その学生には「口頭とはいえ内定辞退を承諾しているため、すでに内定者ではない」と伝えましたが、同様のケースに備えて対応策を教えてください。

A:内定辞退の連絡が電話による場合、その電話の主が本当に本人か否か、また内定を辞退する意思表示を受理した証拠も残らないため、電話連絡だけで決めると想定外のトラブルに発展する危険があります。そこで内定を出す時点で「万が一、内定を辞退する場合は書面による申し出に限る」として「内定辞退書」の提出を求め、さらに「内定辞退を撤回することは原則として不可」と明確に通知しておくとよいでしょう。なお、貴社には内定辞退の撤回に応ずる義務はありませんが、優秀な社員でも新入社員の頃には何かしらミスを犯した経験はあるものです。内定辞退の撤回は、学生の就職活動では大きなミスに違いありませんが、申し出た学生に再面談の機会を与えるなどの配慮も検討してみてはいかがでしょうか。

【課長になったら残業代は出ないのですか?】《平成29年10月号掲載》

Q:40歳の専業主婦です。広告関係の会社で営業職をしている夫がこの春に課長になりました。会社からは「課長は管理職だから残業代は出ない」と言われたそうです。勤務時間は相変わらず長く、深夜まで残業して帰宅しても残業代はでていないようです。毎月のお給料の手取り額も以前と変わらないか、逆に減っている月もあります。夫の体も心配ですし、納得がいきません。

A:会社内で課長職など管理職の地位にある労働者でも、労働基準法上の「管理監督者」に当てはまらない場合があります。管理監督者とは、労働条件の決定、その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者をいい「労働時間による管理には向いていない」という理由から労働基準法で定められた労働時間、休憩、休日の制限を受けません。過去の裁判例では管理監督者であるかどうかは役職名ではなく、その職務内容、責任と権限、勤務態様などの実態によって判断されています。なお管理監督者であっても労働基準法により保護される労働者であるため、労働時間の規定が適用されないとしても、どれだけ働いても構わないわけではなく、健康を害するような長時間労働をさせていけないことに変わりありません。

【「退職願」「退職届」「辞表」の違いを教えてください】《平成29年9月掲載》

Q:この春、事務機器メーカーに入社しました。入社して2カ月ほど経った頃に仕事が辛くなり、会社をやめようと思った時期がありました。先輩や上司のフォローのおかげで今は仕事に楽しく取り組めるようになりましたが、そのときに「退職願」と「退職届」と「辞表」はいったい何が違うのか?と、ふと疑問に思いました。言い方が違うだけで内容は同じなのでしょうか?

A:「辞表」という言葉はよく耳にしますが、これは会社役員や公務員など委任や任用による契約を辞める場合に用いるもので、一般的な労働契約の場合は「退職願」や「退職届」を使います。退職願とは、その名のとおり労働者側から「退職を願い出る」もので、会社が退職の願い出を聞き届けるまでは撤回は可能と考えられます。このため自己都合による退職の場合は、退職願を使います。一方の退職届は「退職を届け出る」もので、会社に対する本人の最終的な意思表示であり、提出時点で雇用契約の終了となるため通常、撤回はできません。解雇や退職勧奨など会社都合で辞める場合には退職届を提出します。失業給付を受ける際の退職理由では、自己都合か会社都合かで給付内容が異なるので注意しましょう。

【在宅勤務制度の導入について教えてください】《平成29年8月号掲載》

Q:Webサイトの制作やシステム開発の会社を経営しています。現在、社員は10名ほどですが、業績拡大に向けて増員を考えています。しかし、当社のような小規模企業は採用が難しく、優秀な人材に来てもらうためにも、また今いる社員のワークライフバランス実現のためにも在宅勤務制度を導入したいと考えています。現在の就業規則には在宅勤務についての定めはなく、どのような観点で準備を進めていけばよいか教えてください。


A:在宅勤務制度は政府が「働き方改革」として進めているテレワーク(ICTを使って時間や場所に捉われない働き方)のひとつです。対象者は雇用関係にあれば労働基準法が適用されるため就業場所、始業・終業・休憩時間、通信費等の費用負担があればそれも含めて就業規則に記載する必要があります。一方、働く時間を自由に選択できるようにするために、事業場外みなし労働時間制などの新しい時間管理方法の導入も必要となります。テレワークのガイドラインは2017年度中に出る予定ですが、当面は2008年に厚生労働省が出した「情報通信機器を活用した在宅勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」で検討を始めるとよいでしょう。

【保育所経由での通勤について教えてください】《平成29年7月掲載》

Q:婦人服の小売業で人事を担当しています。育児休業期間を終えて仕事に復帰する女性社員から「子どもの保育所が職場とは反対方向にあるため、自宅から保育所に寄って出社するという通勤ルートで交通費を申請したい」との問い合わせがありました。その場合、自宅から職場までの交通費の約2倍の金額となります。また店舗間での異動もあるのですが、会社は保育所経由での通勤交通費を支給する必要があるのでしょうか。

A:通勤交通費の支給は法律で義務付けられていませんが、平成27年の政府の調査では約9割の企業で「通勤手当」として交通費相当額の全額、あるいは一部補助の形で支給されています。いずれにせよ就業規則等で支給対象を決めておかなければなりませんが、多くの企業では「合理的な経路および方法による最短コース」を支給の対象として届出を求めています。このような定めがある場合、保育所経由の通勤経路を「合理的な経路」として認めるか否かが問題です。個別の事情を配慮し過ぎるとキリがありませんが、保育所経由の通勤途上の災害が労災として認定されたケースもあります。貴社の「合理的な経路」の判断基準を決める必要があるでしょう。

【「遺族補償年金」について教えてください】《平成29年6月掲載》

Q:設立3年のIT関連企業で人事を担当しています。もともとはプログラマーで人事や総務の経験はなかったのですが、会社が成長するにつれて管理部門を整備することの必要性を痛感し、プログラマーと人事を兼任しながら日々勉強しています。先日、ふと気になって社員が死亡した際の対応について調べたところ「遺族補償年金」という制度を見付けました。厚生年金で支給される遺族厚生年金とは違うものなのでしょうか。

A:「遺族厚生年金」は厚生年金の被保険者または被保険者であった者が死亡した際に、遺族の生活保障のために支給されるもので、「遺族補償年金」は労働者が業務災害で死亡した際、労働者を失ったことによる損失を補うものとして遺族に支払われるものです。2つの制度の仕組みの違いは、遺族の対象者として遺族厚生年金では含まれない兄弟姉妹が、遺族補償年金には含まれることと、遺族厚生年金にはない「転給」という制度が遺族補償年金にはあることです。転給とは、受給権者が死亡等により権利を失ったときに次の順位者に受給権が移り、受給権者がいなくなるまで支給される制度です。これは労災年金が手厚いといわれるゆえんのひとつでしょう。

【「限定額適用認定証」について教えてください】《平成29年5月掲載》

Q:40歳の会社員です。会社で健康保険に加入しており、妻や子も扶養家族です。先日、妻に大きな病気が見付かりました。精密検査後に手術をし、2カ月ほど入院が必要なことが判明しました。妻の健康もさることながら、医療費も相当な額になるようで家計の上でも不安です。同僚に「高額療養支給申請よりも限度額適用認定証をもらった方がいいよ」と言われたのですが、両制度にはどのような違いがあるのでしょうか?


A:病気やケガなどで医療費の自己負担が大きくなったときのために、健康保険には「高額療養費制度」があります。医療機関等の窓口での支払いが高額な負担となった場合、申請により自己負担限度額を超えた額が払い戻される制度です。これには申請手続きが必要な上、払い戻しは通常3~4カ月後になります。そこで急な入院など高額な医療費が発生すると予想できる場合は「限度額適用認定証」を各健康保険の窓口に事前に申請して交付を受け、病院に提示することで、その月の医療費の請求分から自己負担限度額の範囲に変更できます。なお、ひと月あたりの自己負担限度額は所得によって5区分に分かれていますので、事前に確認をしておくとより安心です。

【「過労死ライン」について教えてください】《平成29年4月掲載》

Q:従業員20名の食品会社を経営しています。当社は創業以来、残業はほぼゼロで操業を続けており、幸いなことに仕事が原因で心身の健康を崩す従業員も出たことがありません。しかし、この春に長女が就職した会社がかなりの激務で、帰宅が深夜になることもあるようです。自社の経営にも役立てたく、いわゆる「過労死ライン」と呼ばれる過労死の基準となる時間数など、過労死を取り巻く最近の状況について教えてください。


A:過労死ラインとは、厚労省通達で示された健康障害リスクが高まるとする時間外労働時間を指す言葉です。これは労災認定における労働と過労死との因果関係の判定基準となっています。

心筋梗塞や脳出血等の過労死の場合、発症前1カ月におおむね100時間、または2~6カ月にわたり1カ月当たり概ね80時間超の残業があった場合、「業務と発症との関連性が強い」としています。また認定基準は「月45時間を超え、残業時間が長くなるほど業務と発症の関連性が徐々に強まる」とも規程しています。「過労死等防止対策白書」によると、2015年度の過労死による労災認定は96人、過労自死(未遂含む)では93人でした。この数字をゼロにしていきたいですね。

【インターンシップ制度について教えてください】《平成29年3月号掲載》

Q:IT関連企業で人事を担当しています。会社設立から5年が経ち経営も安定してきたので、さらなる事業拡大に向けて新卒採用を予定しています。意欲があり当社の理念に共感してくれる学生に出会いたいのと、採用時のミスマッチを防ぐためにもインターンシップ制度を検討しています。今のところインターンシップ生には職場に入って業務を体験してもらいたいと考えています。導入の際に注意すべきポイントを教えてください。

A:インターンシップ制度を導入する際には、学生および社内に対して制度導入の目的を明確にし周知することが重要です。貴社の目的が「理念に共感してくれる学生に出会う」「採用時のミスマッチを防ぐ」ことであり、具体的には「職場に入って業務を体験してもらう」というのであれば、制度本来の目的にかなうものです。金銭を支払う企業もありますが、基本的には労働ではないという認識が通例です。しかしながら実質的には労働と見られかねないとの批判もあり、行政通達では「学生の実習が直接生産活動に従事するものであって使用従属関係が認められる場合には、その労働者性を肯定する」と示されていることに注意する必要があるでしょう。

【最低賃金の改定について教えてください】《平成29年2月号掲載》

Q:昨年の春に企業しスマートフォンアプリの開発会社を経営しています。アルバイトスタッフ数名に働いてもらっているのですが、スタッフに「時給が最低賃金を下回っている」と指摘されました。恥ずかしながら毎年、秋に最低賃金の改定があることを知らず、この4カ月最低賃金を下回る時給で給与を計算して支払っていました。時給の見直しはすでに行いました。他に対応すべきことや、違反による罰則などはあるのでしょうか。

A:最低賃金は働く者のセーフティネットとして、パート・アルバイト・嘱託など雇用形態や呼称に関係なく、全ての労働者およびその使用者に適用されます。これは改定された日から適用されますので、貴社の場合はさかのぼって差額を支払わなければなりません。最低賃金の対象となる賃金とは、通勤手当・時間外手当・家族手当・精皆勤手当などを除いた毎月支払われる基本的な賃金です。最低賃金を支払わなかった場合は、最低賃金法または労働基準法により50万円以下または30万円以下の罰金を課せられる場合があります。最低賃金を守ることは事業経営上、基本的な遵守事項です。労働者の会社に対する信頼低下を招かないように十分注意しましょう。

【従業員が50名を超えた場合の健康管理体制は?】《平成29年1月掲載》

Q:製造業で人事総務を担当しています。当社はこれまで45名前後の従業員規模で稼働してきましたが、この度、中途採用を行い正社員とパート社員を合わせた従業員数が50名を超えそうです。産業医をおいたりストレスチェックを行うのは50名以上の事業場と認識していますが、当社で従業員が50名を超えるのは初めてなので、現時点では産業医の選任もできていません。何から始めて、いつまでに手続きをしないといけないでしょうか。


A:常時雇用する労働者が50人以上となった製造業の事業場は、14日以内に産業医・安全管理者・衛生管理者を選任し、遅滞なく所轄の労働基準監督署に所定の様式で報告しなければなりません。今回選任する安全管理者と衛生管理者は事業場専属の者でなければなりませんし、新たに選任する安全管理者については安全管理者選任時研修の受講が義務付けられています。また製造業の一部の業種では、毎月1回安全委員会と衛生委員会(該当しない製造業の場合は衛生委員会のみ)の開催が義務付けられており、委員会の設置及び開催、議事の記録を3年間保存する義務などが生じます。なお、ストレスチェックについても1年以内毎に1回の実施義務が生じます。

【夫婦で同時に育休を取得したいのですが】《平成28年12月掲載》

Q:メーカーの研究職です。社内結婚した妻の妊娠が分かり、妻の出産後は私も育児休業を取得したいと考えています。法律上は夫婦が同時に育児休業を取得するのは問題ないと認識していますが、自分なりに調べた上で上司や会社と相談していきたいと思っています。夫婦そろって入社10年目、育児休業取得後に復職の予定でいます。休業中、収入が減ることは覚悟していますが、検討する上で注意すべきポイントがあれば教えてください。

A:子が満1歳になるまで子の父、母、または父母が同時に育児休業を取得することができます。子の父母がともに育児休業を取得する場合は、それぞれが1年間の範囲内で子が1歳2カ月になるまで育児休業を取得できます。これが「パパ・ママ育休プラス」と呼ばれる制度です。休業期間中、男性は出産日または出産予定日から、女性は産後8週間後から育児休業給付金を受給できます。上限はありますが育児休業開始から180日目までは月給の67%、181日目以降は月給の50%となります。長期間の休業を取得すると復職後が気になります。育児に関する復職復帰プログラムがどのように提供されるのか、休業前に相談されることをおすすめします。

【別事業所の社会保険や労働保険の手続きについて】《平成28年11月掲載》

Q:製造業で人事総務を担当しています。この度、隣県に新しく工場を建設しました。工場で働く従業員は地元の人を新規採用します。現在、本社および本社隣接の工場の従業員の社会保険、労働保険の申請や管理は本社で一括して行っています。新工場については別の事業所として管理する予定なのですが、各種書類に事業主印を押すのに、書類をやり取りする手間と時間がかかるのが気になっています。何か良い方法はあるのでしょうか。


A:規模の大きな支社や支店、工場など本社とは別の事業所がある場合、その事業所の責任者を企業全体の事業主に代わる「事業主代理人」として選任し届出ることで、その事業所単独で社会保険や労働保険の手続きができます。ただし、労働保険(雇用保険・労災保険)は、事業主代理人の届出手続きだけで有効となりますが、社会保険ではその事業所が独立した適用事業所であることが条件となります。つまり、その事業所が適用を受けられるだけの労務管理の実態、具体的には勤怠管理から給与計算まで行っている状況であることが求められます。このように労働保険では、事業主代理人の意味合いが異なりますので注意が必要です。

【社会保険の加入義務拡大に関する注意点は?】《平成28年10月掲載》

Q:従業員100名の製造業で総務を担当しています。この10月からパート・アルバイトの社会保険加入の適用範囲が拡大されるとのことですが、従業員501人以上の企業が対象のようなのですぐに対応することはないかと思っていました。しかし、私の妻も別の会社でパートで働いており、今回の社会保険の加入対象となるとのこと。同じようなケースは私以外でも発生することが予想され、自社でも何かしら対応が必要と考えています。


A:平成28年10月1日より社会保険の適用事業所のうち、厚生年金の被保険者が1年のうち6カ月以上、500人を超えることが見込まれる事業所を特定適用事業所として短時間労働者(パート、アルバイト等)に対する健康保険・厚生年金保険の適用が拡大されます。短時間労働者の新雇用基準は「週の所定労働時間が20時間以上・雇用期間が1年以上見込まれる・賃金(所定内賃金)の月額が8.8万円以上」で学生は除外されます。貴社が今回の適用拡大の対象外でも、従業員の被扶養者が新たな基準により社会保険に加入するケースが出てきます。「家族手当」が健康保険の被扶養者を支給の対象としているならば、給与規程の見直しも検討しましょう。

【副業を認めるルール作りについて教えてください】《平成28年9月掲載》

Q:システム開発会社で人事を担当しています。最近、採用面接時に「副業は認められていますか?」と尋ねられることが増えました。社内にも副業に興味を持つ社員が出てきており、すでに問い合わせもあります。社長とも相談の上、優秀な人材の獲得・定着のためにも副業を認めることを検討しております。現在の就業規則では副業について特に禁止する記載はありませんが、ルール作成に当たって検討すべきポイントを教えてください。

A:昨今、所得の補てんや自己実現、スキルアップなどを目的に社員の副業を認める企業が増えてきました。

しかし、他社で勤務したり自営などの副業を承認することによる企業側のリスクについては、慎重に対処しましょう。まず、安全衛生上の観点から「屋外作業、特に身体・精神的に負荷の掛かる仕事」「深夜時間帯など安全と健康が維持しにくい職種」は除外すべきですし、会社の機密が保持できない「同業、競合他社での就労」、社会的イメージを損なう恐れのある仕事なども認めるべきではないでしょう。また副業を認める場合の許可や届出の手続きを規則に定め、通勤災害時の扱いや労働保険、労働時間管理などの運用ルールも明確にしましょう。

下村典正税理士事務所は
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TKC全国会
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